「居住福祉論」では、住環境の専門家として必要な知識をえることとともに、生活をともにする仲間として当事者の視点に気づくことを目的としています。このため、当事者体験をしたり、当事者の話を聞く機会を多く取り入れています。
第4回の講義では、実際に車椅子に乗り、校内のバリアフリーをチェックしました。基準通りの勾配のスロープでも意外に腕の力が必要なこと、わずかな段差でも乗り越えるのに勢いが必要なことなどが、実際にやってみると分かります。
第7回の講義では、車椅子ユーザーの当事者に話を伺いました。同じく車椅子ユーザーの夫と住むために工夫して建てた住宅の工夫や、台湾、フランスなどへの旅行の経験について話してくださいました。
第9回の講義では、視覚障がい者の当事者に話を伺いました。ラジオDJもされていたことのある方なので、まるで見えているように教室の空気を掴んでいきます。街で手助けをしてくれる方のエピソードを面白おかしく紹介してくださいました。今はとても明るくポジティブな方なのですが、病気が進行して全盲になる際の受容のプロセスなども包み隠さずお話ししてくださいました。
お二人とも女性の当事者だったこともあり、「肩が上がりにくいのに、髪の毛のセットはどのようにしているのですか?」「見えないのに洋服のセンスがいい。どのように選んでいるのですか?」など、女子大生らしい質問も出ていました。
それぞれの次の講義では、班ごとに分かれて、振り返りと感想をまとめて発表しました。「よかれと思っても悪い介助もある。当事者の意見をきくことが大事だとわかった。」「かわいそうと思っていたけれど、そう思うことが間違えいだとわかった。」などと意見が出ていました。
ポジティブに生きている当事者の姿を知り、尊厳に配慮する気持ちを育むことで、必要な環境整備を考える素地になればと思っています。
宮野 順子