2015.09.04

夏の集中講義「専門職の連携(基礎)」を実施しました

8月6日、7日の2日間、夏の集中講義として「専門職の連携(基礎)」を実施しました。この講義は、健康科学部共通科目であり、医療福祉機関をはじめとした地域の生活者の支援に関わる職種の役割を理解する基礎的な科目で、専門職養成のための初年次教育として実施されるものです。

講義の目的は以下の4つです。
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(1)それぞれ取得を目指している資格が、他職種と連携し地域における包括的なヘルスケアシステムを担い、人の命を救う専門職としての資格であることを理解する。

(2)地域における包括的なヘルスケアシステムを担う他の専門職を理解する。

(3)他職種の視点を通して、将来についてのより明確な自己像を描けるようになる。

(4)他職種間でのコミュニケーションを図れるようになる。
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講義では全体で参加する講義型授業の他に、グループワークを中心とした演習型授業の2つが行われ、他学科・専攻の学生とペアを組み積極的に交流しながら授業を進めました。

初日の演習型講義には「各専門職の概要」として、現役の管理栄養士、看護師、臨床心理士、言語聴覚士、社会福祉士の方々に仕事の魅力、人と関わる楽しさ、大変さについて、各教室に分かれてお話を伺いました。

例えば、言語聴覚士では、まず病院勤務経験と現在の訪問業務との違いについて触れ、「患者を尊敬し真っすぐに向き合えているか、専門職としてできることを精一杯行っているのか、常に自問自答する日々である。医療の観点から患者と関わる以上、徹底したリスク管理を行わないと取り返しのつかないことになる。そこが一番大変。」
「専門職だからこそ必要としてもらえ、患者の人生の一部に深く関わることができる。仕事を通して自分自身を成長させることができる。一生続けられるやりがいのある仕事である」と仕事の大変さ、やりがいを語っていただきました。

また、“医療”はEBM(医師の指示の下行うもの)であり、“介護・社会福祉”は利用者のニーズに対応するものでそれぞれ違いはあれど、常に患者の意志を尊重し、目標を共通にすること、それぞれの役割と立場を理解し、お互いが少しずつ意識を変えることが大切であるとお話しされました。

2日目の演習型講義では事例検討を行い、学生に在宅生活の高齢者の患者の事症例が与えられ、そこから各専門職の支援のアプローチとして「チーム医療」の重要性を学びました。
「チーム医療」とは、超高齢社会にともない、一人の患者に対して、医師をはじめ、看護師や言語聴覚士、管理栄養士、社会福祉士や臨床心理士といった複数の医療・福祉の専門職が連携して治療やケアにあたる地域包括ヘルスケアシステムのことです。患者さんの生活の質(QOL)の維持や向上、人生観を尊重した療養の実現をサポートするには、異なる専門職が連携・協働しながらそれぞれの専門スキルを発揮しなければならないため、より深く互いの職務を理解する必要があります。そのため、本講義は実施されています。
学生たちは、それぞれの専門職がどのように問題を捉え、どのように解決していくのかを、1つの事例を検討することから学び、「それぞれの専門職のもつ役割の重要性」や「お互いの専門職性を理解したうえで連携していくことの大切さや難しさ」を理解することができました。
また、日頃は一緒に学ばない他学科、他専攻の学生とのグループディスカッションによって、新たな自己発見やコミュニケーションスキルの重要性に気づき、改めてグループディスカッションの大切さも学びました。
この「専門職の連携」の講義をきっかけに、自身の専門分野への関心を高めた学生も多く、今後の授業に対する意欲の向上にもつなげることができました。

専門職連携で重要となるのは、相手の立場に共感する能力や多面的に想像できる能力、共通見解を探し出せる調整力・指導力や他職種の領域と責任範囲の明確な理解力です。これら4つの力を高め、おもいやりの心を持って地域・社会に貢献できる人間となってほしい、として講義は締めくくられました。

学生たちはこの2日間学んだことを、グループ内で報告し合い、レポートを作成します。
自学科・専攻の科目だけではなく、他の専門職についても学ぶことにより「チーム医療」に関するマインドや実践力を身につけ、また、実際の事例を与えられることで、そこから患者の立場に立って寄り添い支援できるヘルスケアについて学ぶことで、将来地域社会で専門職として働く自分の姿をより具体的にイメージできるようになったのではないでしょうか。