2015.09.03

心理学科講演会「動物・人・コミュニケーション」を開催しました

8月30日、本学光風館において旭山動物園・坂東元園長をお招きし、人間関係学会主催京都光華女子大学心理学科講演会「動物・人・コミュニケーション」を開催いたしました。

心理学科では、学生・卒業生および教職員で人間関係学会を主催し、毎年学会雑誌などを発行して研究に寄与しつつ、会員のネットワークの活性化に努めてきました。そして、それらをさらに発展させる目的から、昨年より有識者を招き、より専門性の高い講演を拝聴する機会を設けることにしました。
本年は、卒業生の希望もあり上述した坂東園長に講演を依頼しました。「心理学科の講演会になぜ動物園の園長さん?」と思われるかもしれませんが、心理学では様々な実験において、動物のコミュニケーションが人間のコミュニケーションの根幹を示唆することがあるからです。人のコミュニケーションは、時として本音と建前に分離するなど、動物より複雑で意図的なものかもしれません。しかし、その根幹には共通した生命の営みが隠れているのではないでしょうか!

講演会は雨模様にもかかわらず、132人の人が集まり、動物のユーモラスな映像も交え坂東園長は私たちが知らない動物の心の不思議についてお話しくださいました。廃園に追い込まれそうになった旭山動物園を救ったのは、新たに生み出された行動展示という方略でした。この行動展示は、園長はじめ動物園スタッフが、動物園に暮らす様々な動物がより生き生きと生活でき、それぞれの能力をより発揮できる空間を作り出したいという発想と熱意から生まれたものでした。特に印象深かったのは、オラウータンのリアンとジャックのお話で、行動展示により自分の居場所を得た彼らが、相手との適切な距離感を作り出し、互いの存在を認め合い・受け入れて、相手に「やさしくなれる」行動ができるようになったということでした。このお話は、人間のやさしさコミュニケーションを生み出す要因を示唆するものかもしれません。

最後に、「人間は自分たちにとって快適な環境を作り続け、自分たちの価値観で害獣や害虫というものを判断し、駆除してきました。しかし、人間以外の動物はそのような判断はしません。食うか食われるかの中でさえ彼らは共存しているのです。すべての生き物に生きる意味があり、それぞれの命を輝かせることが可能です。例えば、人はハエを嫌いますが、ハエがいなければスズメは生きられないのです。今後も、他の生き物を絶滅に追いやる道を選択し続けるなら、人も生物である以上幸せであり続けることはできないでしょう」という共生のメカニズムについて触れ、人間だけが特殊な価値あるものという考え方に偏ることの危うさについて警鐘を鳴らされました。

今回の講演会では、動物の日頃の行動の中に人と共通する命の営みがあり、他の生物との共生において地球規模の大きな視点から我々人間が真摯に考えなくてはいけないことをご指摘いただいたように思います。心理学科では、今後もこのような有意味な講演会を開催し、学生・卒業生のみならず多くの人々に心理学に親しんでいただく機会を提供していきたいと思います。