合格者の皆さんへ

心理学と社会との関わりについて

心理学は大変幅広い学問領域です。人が関わる事柄すべての中に、心理学のテーマがあります。そして、心理学を活かすチャンスもさまざまなところにあります。
「今後、心理学と社会はどのように関わっていくと思われますか?」という問に対して、心理学科教員はこのように考えています。

石谷 みつる(臨床心理学)
臨床心理学の立場からです。社会生活を営む人々の中で、控えめで目立たず、かつ、必要とされるサポートを提供できるよう存在し続けることだと思います。

今西 徹 (臨床心理学)
臨床心理学について言えば、一時のブームのような状況は過ぎ去った感じですが、その分これからは本当に必要とされる部分だけが残って、社会に根付いていくのではないかと思っています。

川西 千弘(社会心理学)
これからは、人の心理に配慮した施策やシステムづくりが社会で進んでいくと思われます。例えば、リスクコミュニケーションなども、人がどのような時に危機感を感じ、どのような頻度やタイミングで如何なる情報を発信することが効果的か?あるいは群衆パニックになった時、人はどのように行動するのか?などについて配慮する必要があります。また心理の国家資格化が進めば、社会の中での心理職の位置付けもより明確になってくるものと思われます。

神庭 直子(健康心理学)
心理学の知見を、心身の健康の維持・増進のために役立てていくことが大切だと考えています。例えば、柔軟なものの見方やセルフコントロール、他者との関わり方のスキルなどは、特別なものや敷居の高いものではなく、生活していく上での一般的な知識やスキルとして広まり、浸透すればよいなと思っています。ただし、心理学の知識を、自分のために、そして他者のために役立てるためには、ちょっとした工夫や仕掛けも必要です。どうすればよいのか、一緒に考えていきましょう。

千野 美和子(臨床心理学)
とっても難しい問題ですね。わたしにとっても、心理学は個人と向き合う、または、自分と向き合うものだと考えているので。ただ、今後、当然社会と関わっていく必要はあると思っています。その場合も、個人個人が生きやすい社会になるように、個人の目線から関わっていくことが大切だと考えます。

竹西 正典 (社会心理学)
心理学は、社会やその中で暮らす人々の心の健康に関わっていくように思います。

徳田 仁子(臨床心理学)
心理学は自己理解、他者理解にとって必要な基礎知識を提供しています。格差社会が一層進むと言われている昨今の状況では「つなぐ役割」が社会の中ではますます必要となっていくと思われます。心理療法の理論的枠組はこころの病理だけではなく、一般的な状況にも大いに役立ちます。たとえば葛藤解決の際「相手もOK 自分もOK 」を目標とする<アサーション>や自分の感じ方が変わると見え方も変わってくることを意図した<リフレーミング>など、今後とも「つなぐ役割」にとって必要な心理学理論を集積していきたいものです。

礪波 朋子(発達心理学)
専門の発達心理学についていえば、発達の知識や考え方を身につけることにより、子どもの育ちのみちすじを理解し、どのような援助が望ましいかを考えることができるという意味で、今後さらに保育や育児の現場で役立っていくと思います。

長田 陽一(臨床心理学)
DNA解析などの新領域やインターネットという新しい公共空間の出現など、これまでの枠組みや価値観・人間観が急速に崩れつつあります。そういう時代の変化の中で、心理学はこれからいろんな他の学問領域と融合した新しい専門分野(Multi-disciplinary)として、人間の行動のすべてにわたって深く関わっていくと思います。

鳴岩 伸生(臨床心理学)
難しい質問ですね。人間のライフステージから見ると、周産期の心のケアや子育て支援に始まり、スクールカウンセリング、産業領域におけるメンタルヘルス、そしてターミナルケアに至るまで、心理学の知見は、私たちの日常生活のさまざまな場面で活かされ始めていると思います。今後も、一人ひとりの目の前にある日常(あるいは非日常)が豊かになるような知見を地道に提供していくことが最も大切な営みだと思います。

藪添 隆一(臨床心理学)
現代社会は、「役に立つこと」「効率があがること」を目指す「生産社会」です。生産社会の加速度的発展は、物質的豊かさをもたらしてきました。しかし、心の問題の増加、深刻化は、ますます激しくなってきているのです。心を育てる、回復させるためには、「非生産的」コミュニケーションが必要です。「無駄話」「遊び心」の意味と意義を熟知した臨床心理士を育てることは、社会に心を育てることにつながると思います。