2019.10.24

心理療法と身体

カウンセリングや心理療法の実践に関心があり、そのなかでも特に身体ということに着目しています。カウンセリングではカウンセラーがクライエント(相談者)に「共感」することが大事、とよく言われます。しかし実際のところ、相談する当の本人も、自分の悩みや苦しみについて、うまく言葉にはできないことが多いし、また、それを聴くカウンセラーの側も、共感が大事とわかってはいても、本当にクライエントの気持ちにより添っていくことは簡単なことではありません。そこで、カウンセラーが自分の心だけではなく、身体もクライエントの話を聴くための受信機として使うこと、つまり、カウンセリングの場で生じる様々な身体感覚などを大事にしていくことで、クライエントのうまく言葉にならない表現(表情や仕草、声のトーンなど様々なことが「表現」と考えられます)をも受けとめることができ、結果としてカウンセラーとしてのパフォーマンスをより向上させていくことができるのではないか、と考えています。そう考えると、カウンセラーの訓練としては、実際にカウンセリングを行うことが最も重要であることは言うまでもありませんが、自らの身体を整え、身体感覚を微細に観察できるようになっていくこともまた、非常に大切なことになってきます。それは実際にクライエントに出会う以前に準備していくことができることであり、今後考えを深めて、カウンセラーの訓練の仕方の幅を広げていくことにつなげられたら、と考えています。

                                      今西 徹(
20191023日)