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スタッフおすすめの本

「荒野」桜庭一樹著 (913.6/SaKa 3階閲覧室)

2009.01.20

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「こうや」と読みます。前回直木賞を取った井上荒野(いのうえあれの)さんがふと頭に浮かび、タイトルが気になりました。「あらの」と読むのかな、と。主人公は山之内荒野(やまのうちこうや)、12歳の女の子。少し読み進めると、荒野の父親は恋愛小説で有名な「作家」とあり、やはりこれは井上荒野さんと関係があるのか…。
さて肝心の「荒野」のストーリーは、作家の父親、母親代わり若い家政婦さんと暮らしていた荒野のもとに、父親の再婚相手が現れ、なんとその息子がクラスメートだったという…。めまぐるしく変化する状況のなかで、荒野は子どもから少女へ少しずつ変化し、淡い気持が少しずつ形をとり始めます。近頃めっきり「おとな」が主人公の小説しか読んでいなかったので、初々しい気持ちがあふれていて少しもどかしくもあり、逆に新鮮な感じをうけました。(P)

「ニシノユキヒコの恋と冒険」川上弘美著  新潮文庫 (2階文庫コーナー)

2008.11.19

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タイトルの彼「ニシノユキヒコ」について、10人の女性がそれぞれ語る連作短編小説。文庫の解説を引用させていてだくと「稀代のダメ男、ニシノユキヒコのあらゆる時代の姿、恋愛を冷徹な視線で描く一方で、各篇の語り手である女性たちの、そのときどきの気持ち、愛についての考え方を浮き彫りにする」とある。いつも女性を愛そうと努力するのにできない、可哀相な彼。そして、そんな彼をわかってしまう彼女たちは、彼の元を去ってしまう…。この短編集の第1話「パフェー」はその中で、かなり異色、というか幻想的。数々の女性たちと出会い別れてきたニシノさんが、年月をへて、付き合っていた時の約束を果たしに彼女の元を訪れる話です。ひととき、確かにあった時間を懐かしむ濃密な時間が、二人の間で淡々とかわされてゆきます。読んだあとに、夏目漱石の「夢十夜」の第一夜を思い出しました。「こんな夢を見た」で始まる第一夜は、死を目前にした女性が、「百年、私の墓の傍に坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」と男に告げるという、これまた不思議な話です。どちらも、すでに嬉しさも寂しさもなく、約束はただ静かに確かに果される。それだけに二人の関係が思われます。(P)

「わたし8歳、カカオ畑で働きつづけて。:児童労働者とよばれる2億1800万人の子どもたち」 (368.38/WATA 2階閲覧室)

2008.09.22

現在の日本では身近に感じることができない児童労働。ILO 2006年のデータによると、世界に2億1800万人の子どもたちが義務教育を妨げる労働に従事しており、その中の1億2000万人が、兵士や売春婦を含む危険労働と呼ばれる有害・危険・違法な労働を行っている。この本は五歳からサッカーボールを縫う少女の話から始まり、児童労働という大きな問題の全体像をわかりやすいことばで解説している。

子どもが働かなくてはならない現状、その結果子どもに及ぼす心身への被害、おとなたちや企業はどのような対策で立ち向かっているのか、そして当事者である子どもたちの力強い問いかけ。「いつになったら勉強すること、あそぶこと、人として普通に生活できるようになるのでしょうか。」雇い主に虐待を受けていた少年の声である。問題を解決に向ける第一歩には知識を得ることが必要であり、この子どもたちには教育を受けられる環境を与えることである。教育の重要性を強く認識した。(Scarlett)

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「刑務所のリタヘイワース」(「ゴールデンボーイ : 恐怖の四季春夏編」に収録) (新潮文庫 1階文庫コーナー)

2008.07.19

スティーヴン・キングといえば、ホラーや超常現象の小説を書く作家として有名です。今回は、超能力や血みどろな世界が描かれていない「刑務所のリタヘイワース」をご紹介します。このタイトルではピンとこない方もいると思いますが、映画「ショーシャンクの空に」の原作だと聞くと多くの方がご存知ではないでしょうか。

銀行員のアンディは妻とその愛人を殺したという身に覚えの無い罪で終身刑の判決を受け投獄される。それでも明日への希望を信じて闘い続けるアンディ。ショーシャンク刑務所の中での辛くて孤独な生活の中で知り合う「調達屋」レッドとの交流。アンディの長くて気の遠くなりそうな計画とは?最後には大きな希望を抱かせてくれ、ジワっと感動を覚える秀作です。

私は最初に小説を読み、映画を見ましたが小説の雰囲気を損なうことなく表現されていて、映画でもまた感動したことを覚えています。映画は1994年に作られましたが、未だに高い評価を受けています。映画のDVDも図書館に所蔵していますので、お時間のあるときにどうぞ。(M)

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「演出家の仕事」(岩波新書 新赤版1105) 2階新書コーナー

2008.07.19

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みなさんの趣味は何ですか?料理?それとも、運動??
この中に舞台鑑賞が趣味って言う方もいるんじゃないでしょうか?そんな方にはこの本がお勧めです。

舞台を見に行くということは当たり前に“演じる役者”を注目しますよね。では今回は視点を変えて、舞台を操る演出家に興味を持ってみませんか?数々の賞を取り、新国立劇場の芸術監督をも勤め上げた栗山民也によるこの一冊。普段覗くことのできない稽古現場の様子や、世界の演出家たちのエピソードも知ることができます。中には栗山氏お勧めの戯曲も紹介されているので、これを読んだ後に早速気になる戯曲も・・・なんて言うのもいいかもしれませんね。(R)

「夜は短し歩けよ乙女」 (913.6/Moto 3階閲覧室)

2008.02.28

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この作品は「第20回山本周五郎賞」を受賞し、「2007年本屋大賞」の2位になったのでご存知の方も多いことでしょう。

さて、この作品を分類すると何になるのでしょう?恋愛小説?雑誌Psiko(2007年2月号)の「著者に聞く」というページには「天然な乙女と純朴な先輩が、京都で遭遇する不思議な出来事とは?日常の中で起きるファンタジー」とあります。確かに摩訶不思議なファンタジーの世界です。ところが、舞台は京都。私たちに馴染みの深い名前が次々に出てくるのです。「四条木屋町」「阪急河原町駅」「京福電車」などなど。第2章の「深海魚たち」は下鴨神社の古本市が舞台となっており、図書館でお世話になっている古書店の「赤尾照文堂」の名前が出てきたりとか、ファンタジーなんだけれども日常が溢れています。

Psikoには「ほんのちょっぴり日常を忘れたいときにこそ、ぜひ!」と紹介されていますが、京都にいる皆さんは、日常にどっぷりと浸りながら、非日常を満喫してください。ただし文中には難読漢字がとても多く使われています。仮名も振ってありますが、辞書が必要かも・・・(C)

「日本奥地紀行」(081/5/240 C書庫)

2007.11.20

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「この本は、東京から日光、東北、北海道へと約3ヶ月かけて巡った英国人女性の旅行記です。

・・・と、それだけならさして珍しくはないでしょう。しかし、イザベラが旅行したのは、1877(明治10)年!まだまだ江戸時代の匂いが残る中、彼女は何を感じ、何を見たのでしょうか。組み立て式ベッドを携えて旅するそのパワーに圧倒されながら、私は地図を片手に夢中で読み続けました。印象に残ったのは、彼女がしばしば感激する自然の美しさと田園風景。馬、川舟、宿駅といった当時の交通手段。そして、野次馬根性丸出しで宿に押し寄せる日本の人達。同じところに行ったら、今はどんな風景がみえるでしょう?また、まだまだ原生林が広がる北海道やアイヌ人の集落の様子も驚きでした。
ちなみに、同じ東洋文庫には後に、彼女が旅した朝鮮、中国を描写した旅行記もあります。(T)

 

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「不思議の国のアリス」 (726.5/CaLe C書庫)

2007.09.28

仕掛け絵本(通称:ポップアップブック)とは、本を開いたときに立体的な絵が立ち上がったり、音が鳴ったりする仕掛けがされた、絵本のことです。みなさんも幼少の頃わくわくしながらご覧になった経験があると思います。中でも、アメリカの絵本作家ロバート・サブダ(Robert Sabuda)さんの「不思議の国のアリス」や「オズの魔法使い」などは子どもから大人まであらゆる世代を夢中にさせてしまう魅力たっぷりの絵本です。

「どうしてページからはみ出さないの?」って思うほどのスケールの大きなポップアップに、皆さんも驚かれると思います。サブダさんが“紙の魔術師”と呼ばれるのも納得です。是非、皆さんもポップアップの世界を堪能してください。図書館ではサブダさんの作品を含む、40冊ほどの仕掛け絵本があります。

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「しばわんこの和のこころ」シリーズ (386.1/KaYo 2階閲覧室)

2007.09.28

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みなさんは座布団に前後や裏表があるって知っていました? 私は恥ずかしながら知りませんでした。自分専用の食器を持っているって、他の国ではあまりないことも初めて知りました。着物の着方、お茶の出し方、七夕に端午の節句の起源etcetc…。和のしきたり、季節の行事、全部一通り「本」で読もうと思ったら、一体何冊読まないといけないことやら・・・。

ところが、この「しばわんこシリーズ」なら一気に読めてしまうのです。和の心をもった柴犬「しばわんこ」とおてんば三毛猫「みけにゃんこ」が心やさしいご近所の方々と繰り広げるショートストーリー。絵本なので気軽に読めて、ちょっとした知識を得ることができる、お得な本です。(P)

「都と京(みやこ)」 (291.62/SaJu 2階京都コーナー)

2007.05.18

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著者の酒井順子さんといえば「負け犬の遠吠え」でおなじみの方。丁寧な語り口でいながら、するどく観察された内容が心地よい彼女の今回のテーマは、ここ京都。京都に住む人も、そうでない人も「なるほど」とか「えーそうなん?」と思いながら楽しめるのでは?「山は無いのが当たり前、という意識の私には、渋滞している四条通の向こうに東山が見える、といった風景は、最初のうちは不思議に感じられたのでした」なんて一文は、“山はあるのが当たり前”の京都人の私には逆に新鮮でした。

他にも「なぜ人は京都で殺されるか 二時間ドラマ考」や、「冷泉家とヒルズ族」など項目だけでも面白そうです。特筆すべきは、この本の参考文献に本学の日本語日本文学科で発行された「京都と文学」が載っていることでしょう。酒井さんも読んでおられたとはビックリです|(゜o゜)|  (P)

「ぶち猫コヤバシ、とら猫タネダの禅をさがして」 (188.8 S/BrHe 2階閲覧室)

2007.01.27

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「禅」なんて単語のつく本を手に取るとは、自分でも思ってもみませんでした。
でもタイトルにあるように、何とメインは「コヤバシ」と「タネダ」というネコ。

「禅は、花のなかにも陽射しを浴びるひとくきの雑草のなかにも見出されるのだからひょっとしたらネコのなかにも」とは本文より。禅寺で修練を重ね僧侶となったぶち猫コヤバシは、見習い小僧猫タネダを伴って精神修行の旅へ。道中、旅先、コヤバシはタネダに教えを諭します。それは「禅」として頭に浮かぶムツカシサやカタクルシサのようなものはなく、読みすすむことができます。「すべての信仰は結局のところほほえみとよろこびの大切さを説いている。(中略)幸せそうな顔を見せるようにしよう。それは隣人に向ける贈り物」という文章は心に残ったものの一つです。言葉は難しくないけれど実践は・・・。

そして、この本のもう一つの魅力は挿絵です。シンプルな線で描かれた絵が想像をひろげます。
絵本としても楽しめるのでは?(P)

「幕末・明治豆本集成」 ( 022.5/KaYa C書庫)

2007.01.19

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この本で取り上げている「豆本」とは婦女子向きの小型絵本で、今でいう「絵本」の元祖。学術書なので豆本についての調査・研究結果が詳しく書かれているのですが、単純に鮮やかな版画など目で楽しめます。「かちかちやま」や「桃太郎」など馴染み深い作品に、複数のバージョンがあることも知りました。

中でもおすすめは「猫のはなし」です。 「こま」という飼われ猫、可愛がられすぎて主人の膝の上から離れられず、このままでは大好きな隣家の「とら」と夫婦になれない。そして二匹は何と駆落ちを決行、しかも「こま」に横恋慕する「くま」なる猫が現れ…。

絵本でこんな内容!?でもなぜに猫!?この様々な豆本に登場する動物は、ほとんど普通に五本指を持って、普通の人間等身なのです。そこが「絵本」というべきか。だから二匹の駆落ちシーンも着物に頬被り、手に手を取ってという姿。それがまた何ともおもしろいのです。ただこの「豆本」、かなり大型です…。(P

「101の幸福なお菓子 : 最高に楽しい時間のための、とっておきのスイート」 (596.6 S/YaRe 2階閲覧室)

2007.01.06

013614730000.jpg お菓子作りが得意な人はもちろん、作るのはちょっと苦手…という人にもおすすめの一冊です。とっても簡単なものから、ちょっと難しいものまで、101ものレシピが載せられています。一つ一つのレシピには、著者である山本麗子さんからのコメントが付けられていて、作るときのコツを教えてくれるので、失敗なく作ることができます。

自分で作って食べるのもいいですが、誰かに「おいしい!」と言ってもらえると、また次も作りたくなるはずです。初めは簡単なクッキーなどから、お菓子作りに慣れてくれば、クリスマスケーキやバレンタインにむけてチョコレートトリュフにチャレンジしてみては?

「英国式15分家事術:少ない手間でスッキリきれいに暮らす方法 」 (2階閲覧室 590 S/SaYo)

2006.09.06

eikoku.jpg 家事はだれでもできる単純作業と思われがちです。でも、この本で著者がイギリスの大学で学んだハウスキーピング(家事)は学問的であり、家事の奥深さを感じます。「3時にお客様が来るときの掃除、おもてなし準備のタイムスケジュールを描いてみなさい」が最初の課題で著者は大変みじめな成績だったそうです。与えられた時間で段取りよく家事を行ない、残った時間を楽しむのがイギリス人主婦のライフスタイル。家事はクリエイティブであり、やりがいのある仕事だと教えてくれます。15分でできるならと、家事の苦手な私もやる気がでてくる本でした。(K)

「1リットルの涙」 (916 S/KiA 3階閲覧室)

2006.06.07

昨年の10月のことです。いつものように閲覧室で書架の整理しているとこの本が目に入りました。ちょうどテレビドラマになっていたので、誰かが手にとってそのまま置いていたのでしょう。この本は10年以上も前に図書館に入ったもので、最後に貸し出されたのは平成10年です。話題性もあり、掲示板でこの本を紹介しました。すると7人も貸出がありました。内容はサブタイトルが表す通り、難病(脊髄小脳変性症)と闘う少女の日記です。この時の亜也さんは皆さんと同じ年頃です。テレビで見た人、福祉を目指す人、初めて知る人、是非読んでみてください。

「いのちのハードル」(916 S/KiSh)は一緒に闘ったお母さんの手記です。併せて読んでみてください。(C)
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「モリー先生との火曜日」 (93A6/AlMi/(f) 3階閲覧室)

2006.06.04

作者であるミッチは大学卒業後、16年ぶりにモリー先生と再会します。
モリーはALS(筋萎縮性側索硬化症)で余命4~5ヶ月と宣告されていました。
この本は、モリーの死の床で毎週火曜日に行われた2人だけの最後の授業の記録です。愛、仕事、社会、家族、老い、許し、そして死について。

「いかに死ぬかを学べば、いかに生きるかを学べる」モリーの言葉はどれもシンプルなものです。語られる言葉は決して多くはありません。しかし、モリーの悲しみを知っている心や多くの愛、そのシンプルな言葉が私たちの琴線に触れ、深い感動をおぼえるでしょう。(M)
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「ウィッシュリスト:願い、かなえます」 (933/CoEo 3階閲覧室)

2006.06.04

舞台はアイルランドの小さな町。14歳の不良少女、メグ・フィンは強盗に入ったアパートで命を落としてしまいます。一旦は地獄に落ちかけたメグでしたが、天国に行くチャンスを与えられることになります。天国に行けるような霊魂になるため、死を間近に迎えた老人の願いをかなえに現世に行くのですが・・・・。

表紙がかわいいという理由でこの本を読み始めたのですが、魅力的な登場人物、奇想天外な設定とスピーディな展開にすっかりハマってしまいました。幽霊話なのにどこか血の通った胸の熱くなるファンタジーストーリーです。とても読みやすいので「読書は苦手・・・」という人にもおすすめの一冊です。(A)

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「花のレクイエム」 2階文庫コーナー

2006.05.13

秋の夜長に長編小説にどっぷりとはまり込んでゆくのも楽しいものですが、今回は辻邦生さんの短編小説「花のレクイエム」をおススメしてみます。

これは12の短編すべてが、それぞれ一年12か月、季節の花を一つ題材にした作品です。そして、そのひとつひとつに、銅版画家・山本容子さんの美しい作品が添えられています。時代や場所はさまざまに、その一つの花に対する思いはどれも深く、美しく響きます。小説、絵ともに心が澄んでゆく、そんな素敵な短編集です。この秋に、手軽に、贅沢に一度で読書と芸術を味わってみてはいかがでしょうか。(P)

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