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「いけちゃんとぼく」 西原理恵子(著) 角川文庫 2011

2018.07.26

いけちゃんとは? 物語の最後に正体はわかるのだが、「そうだったのか!」とすっきりするような感じではなかった。物語全体を包む、どこかふんわりとした正体だったけれど、予想外の正体に驚き、涙ぐんでしまった。
主人公は小学生の「ぼく」。いつも「いけちゃん」が側にいる。いけちゃんが何ものか、はわからない。丸くて、小さくなったり大きくなったり、増殖したりする。ぼくを包んでくれるやさしいいけちゃんもいれば、悪いことをそそのかすいけちゃんもいる。だから、これは子どものころにあった、自分だけの神様のような存在で、世界の怖いものや、つらいものから身を守る術として存在しているのかなと思った。それだと、この物語はただのありふれた物語になってしまっていただろう。いけちゃんの言葉には、「いけちゃん」のぼくへの想いがそっと寄りそっている。
男の子は駆け抜けるように大きくなるという。いけちゃんはそんな小学生のぼくをずっと見守っている。夏をひとつ過ごすたびに、ぼくは少しずつ大人になる。今までできなかったことができて、大丈夫なことが増えていく。正体がわかってから読み直すと、いけちゃんのその時々の言葉がまた心に沁みる。
あなたの周りの男の子も、いつかの夏に気がつかないうちに駆け抜けて今の場所にいるのかもしれない。その時、この「ぼく」のことを少し思い出してみてほしい。(P)
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