Koka's Heart

健康科学部 看護学科

夢追う朝

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夢追う朝

新しい朝が来た。午前9時、図書館の2階。テニスコートが見える窓際が私の特等席。いつものように国家試験の勉強を始める。

看護師になりたい。そう思い始めたのは、12歳の誕生日。急性リンパ性白血病の治療のために入院していた病院でのこと。どこからか、「ハッピーバースデートゥーユー」という歌声が聞こえてくる。どんどん歌声が近づいてきて、私の病室までやって来た。誰の声かと思えば、小児科の看護師さんと主治医の先生たち。歌と一緒に、看護師さんと先生たちの写真と言葉が綴じられた一冊のフォトブックもプレゼントしてくれた。病院で迎える誕生日を、笑顔で過ごせるようにという優しさがすごくうれしかった。家族に会えないこと、思うように動けないこと、つらいこともたくさんあった入院生活だったけれど、フォトブックをもらった経験や、看護師になる夢に出逢えたことは私にとって大切な宝物になった。

夢を叶えるため、京都光華の看護学科に入学。3年生の実習時、先生たちが事前に実習先に私の足が悪いことを連絡して、環境を整えてくださった。お礼を伝えると、「高橋さんは私の大事な後輩。当たり前のことをしただけやから、お礼はいらんよ」と先生に言われたとき、この大学を選んで良かったと心から思った。

実習中、軽度の認知症がある年配の患者さんを担当したときのこと。認知症の症状と気分のむらでリハビリやシャワーを嫌がることが多かった。毎日のように「今日は何月何日?」と問いかけられた。不思議に思い病室を見渡すと、時計はあるけどカレンダーがない。病院の生活は単調で、忘れやすい。そう思って、手作りのカレンダーをプレゼントした。患者さんと一緒に、今日は何日か、リハビリやシャワーの予定を確認しながらシールを貼った。次第にリハビリを嫌がることも少なくなって、笑顔が増えていった。たった2週間、技術も知識も足りない大学生だけど、患者さんが笑顔になれることは何かを一番に考えるのは私にもできる。あのフォトブックから教えてもらったことだ。

病気になるとできないことが増えてしまう。だけど、できることだってたくさんある。12歳の自分がもらった希望を、病気と闘う子どもたちにも伝えたい。そんな看護師を目指して、今日も勉強だ。

私の人生のキーワード

“にこにこトマト”

小児科に入院する子どもたちと一緒に工作をして遊ぶボランティア活動団体のこと。入院時代、毎日心待ちにしていた時間だった。退院して大人に成長した今、今度は自分がスタッフとして子どもたちを笑顔にしたいと思い、参加している。

にこにこトマト

“やることリスト”

今日一日、自分のできること、やるべきことをリストにする。“夢は生きる希望につながる”病気になって初めて気がついたこと。これまで支えてくれた周りの人への恩返しのために。そして、自分の夢を叶えるために。一日一日を大切に、しっかりと生きていくためのアイテム。

やることリスト

“四つの空 いのちにありがとう”

縁があって出演したドキュメンタリー映画。大学に入学し、夢に一歩近づいたとき、病気を乗り越えた自分にはやるべきことがあると思い出演を決意。病気と闘いながら精一杯生きている小さな命の存在を多くの人に伝えたい。映画の上映会では自分の病気体験を語ることもある。

四つの空 いのちにありがとう
Message from Parents

病気でつらい思いもしたけれど、その分、人に優しく、思いやりのある子に育ってくれて、ありがとう。同じ夢を持つ仲間と一緒に努力した経験が自信になったのかな。いろんなことを積極的に活動している姿を見られて、家族みんなうれしいです。先生や友達に支えられながら、授業や実習を無事に終えることができて本当に良かった。長年の夢を叶えるまで、あと一歩。笑顔と元気を与えられる看護師になってください。裕(父)、典子(母)

在学生 健康科学部 看護学科
在学生T.M

健康科学部 看護学科
(京都府立 北稜高等学校出身)
小学校6年生の春、急性リンパ性白血病と診断され、入院。2年後の秋に治療が終わった。その後、両大腿骨頭壊死症や、バセドウ病が見つかったが、家族や学校の先生に支えられ、2012年には念願の看護学科に入学。在学中はドキュメンタリー映画「四つの空 いのちにありがとう」に出演。木屋町街頭清掃「京都新洗組」、京大病院小児科ボランティア「にこにこトマト」、日本赤十字社の献血PRなどの活動に参加。2015年度には看護師の国家試験を受験。 ※2015年度取材