Koka's Heart

月風 かおり

旅と書と風

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旅と書と風

風を感じる。私の創作活動は、その一言に尽きる。目で、耳で、鼻で、肌で感じた風を墨という白と黒の世界で表現する。風が創り出す風景や人々の風格を書で表現したい、風をテーマに世界へ飛び出していこう、という思いからこの活動を「風書」と名づけ、旅と書道を結びつけて、時間を見つけては地球上のさまざまな場所に出掛けている。

こうして世界中を旅するようになって常々感じるのは、大学時代の経験が今の私の生活に生きているということ。異国の地で逢う人々に恥じないような、日本人として、女性としての教養は、大学時代に培われたものだと思っている。

当時、私は愛媛の実家を離れ寮で生活していた。寮は四人部屋で、長野に静岡、それに地元京都出身と日本各地から集まった学生たちが、四大も短大も入り混じって、将来の夢や憧れ、日々の相談事など色々な話をして過ごした。思えば、このころからさまざまな人の価値観に触れ、交流を深めながら自分自身の世界を広げていたのかもしれない。寮長さんもすごく厳しかった覚えがあるが、だからこそ女性としてのきちんとした振る舞いや、常に相手を思いやり、気遣う心が養われたのだと思う。京都という伝統ある風土の中で、日本人らしい「心」を学びながら学生生活を送れたことは貴重な経験だった。その後それぞれが違う道に進み、もう何十年も経ったが、今でも彼女たちとは交流が続いている。

卒業後、就職をして、結婚をして、子育てをして。私が「風書家」として活動するようになってから、キャリア教育の一環で母校の教壇に立つ機会もいただいた。今の学生たちに、私の海外での体験や、大学時代の想い出を交えながら、夢を追う大切さや女性としての充実した生き方などをお話している。「皆さんが、自分のやりたいことを見つけられますように」と願いを込めて。

京都光華で培った人間性と世界を旅して身につけた価値観や世界観。これら全てが今の私の行動や活動の軸になっている。京都という街を飛び出し、アメリカ、チベット、南極などの世界の辺境で出逢った自然、人、空気。そしてそれを表現する「風書」。グローバルな時代になればこそ、自然への尊敬の念と日本人の品格を携えながら、これら幾多の出逢いと感動を、自分にできる仕事を通して伝え続けてゆきたいと思う。

私の人生のキーワード

“現場主義”

ネットで何でも検索できる時代でも、空気はその場に行かないと感じられない。五感を使って現場で感じることを大切にしてほしい。私がバイクで旅をするのは現場の風をダイレクトに感じたいから。大学での授業においても、教室を飛び出してリアルな空気を感じる機会を積極的に活用してほしい。

現場主義

“自分を変える言葉”

人は、感動から入ると継続する。何かの本を読みとても感動したり、強烈な人に出逢って目から鱗、といった体験があると入り込める。自分を変えたいと思ったときには、良い「本」に出逢って、大きな驚きを与えてくれる「人」に出逢って、自分を見つめ直すために一人で「旅」をしてみることが一番だ。

自分を変える言葉

“出逢いの力”

一番印象的なのがサハラ砂漠をバイクで縦断したアフリカの旅。宗教の違いや貧困、飢餓、日本とは対極の体験をし、自然とそこに生きる人のエネルギーを最も強く感じた。世界各地でいろいろな人や風景に出逢い、そこからまた次の旅につながる。「出逢いの力」はとても大きい。

出逢いの力

“南極での創作”

2015年アルゼンチン政府による「南極極地芸術プログラム」に参加。これまで科学者の領域だった南極で、芸術家として創作活動を行った。大氷河の上で筆を取り感じたのは、己の小ささと自然の偉大さだ。「世界7大大陸感動創作」をテーマに、次の目的地も自分らしく切り拓いていく。

南極での創作
卒業生 月風 かおり
卒業生月風 かおり Tsukikaze Kaori

兄と母の勧めで光華女子短期大学に入学。いつか外国に行った時に役に立てば、と英語や日本文化を学び、1981年に家政科を卒業。就職・結婚・子育てを経て毛筆筆耕の会社に再就職。幼い頃から続けてきた書道の「自由な表現」に興味を持つ。2002年のアメリカの旅をきっかけに、地球から受けた感動を毛筆で伝えたいと「風書家」として活動を開始。以降、アフリカやチベット、南米、南極など世界各国を二輪や登山などで旅しながら創作活動を行っている。作家ネームの「月風」は自然と共存しながら暮らすという中国の有名な絶句「月を友とし風に交わる」から引用。 ※ 大学・学科名は入学時のものです ※2015年度取材