Koka's Heart

真東 美也子

光華人生

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[左下]光華能楽部同窓会「悠晴会」
[右下]仕舞「清経クセ
撮影:金の星写場

光華人生

いつの間にか、48年が経った。光華中学校に入学してから今に至るまで、「光華」での人と出会い、過ごした歳月は、かけがえのない思い出となっている。

中学校・高等学校を卒業し進学したのは短期大学。古典や歴史が大好きだった私は、大学の文学部日本文学科で学び、将来は国語の先生になりたいとの思いもあったが、短大の家政科に進んだ。家政科では服装史などの座学を興味深く学ぶとともに、洋裁・和裁の実習に熱心に取り組んだ。趣味となった手芸や服作りのため、今でも傍らには短大時代のテキストを置いている。

学生生活の中では、社会に出て必ず役立つこととして、常識や礼儀なども厳しく教えられた。もちろん厳しさの中には慈愛が溢れ、私たちは先生を母親のように慕っていた。卒業時、先生に感謝の思いを届けたくて、クラスのみんなに声を掛け、自分たちの作品に使った生地を集めてパッチワークのクッションを作り上げた。「あなたたち一人ひとりのことを思い出すことができる、何より嬉しい贈り物です」。そう言って喜んでくださった先生の笑顔を、今でもよく覚えている。

思えば中高の恩師と共に、京都光華の先生方が私の憧れだったのかもしれない。私も、母校で学生たちの役に立ちたいと思った。思いが伝わり、学園の職員として就職させていただくことができた。慣れない仕事に苦戦していても、先輩方は何かと助けてくださった。あのころ、結婚や出産をしても働き続けることができたのは、身内の協力はもちろんではあるが、上司をはじめ一緒に働く教職員の皆さんの、温かな心の支えがあったからこそだと思う。育休などはない時代、時間的にはかなりハードではあったが、自分でも驚くほどのエネルギーに動かされて、がんばることができた。母性とはなんともパワフルであり、深いものであるかと感じ続けている。人に恵まれ、母も子も成長できた。周りの方に育てていただいたことを、改めて思う。

さまざまな部署を経験する中で、学生たちともたくさんの出会いがあった。また、父や兄弟が講師をしている能楽部に中学から所属していたこともあり、その指導に関わってきた。

忘れられない思い出がある。能楽部のある学生が、秋の大会の曲も役も決まって稽古を始めてすぐに、辞めたいと申し出てきた。自信がないからとうつむいた彼女に何とか前を向いてもらいたいと思い、真剣に話し合った。「結論を出すのは簡単。でもあなたはまだ何もしていない。努力もせずに、自分の物差しだけで決めないで。周りの応援を感じてみて。とにかくやれるところまでやってみようよ。」と。翌日から彼女は見違えるように変わり、立派な舞台を勤め、私たちに感動をくれた。そして現在も故郷で能楽と伝統文化の普及に尽力してくれている。会ったときにはいつも「あのとき、気づかせもらって本当に良かった。」と言ってくれる。こんな出会い、関わりの中から、私自身も気づかせてもらい、成長させてもらってきた。

卒業生として、職員として、学園創立50周年、60周年、70周年の節目も経験した。50周年では広報や統括のサポート、60周年では記念誌編纂や記念式典の司会進行、70周年では全体の統括をさせていただいた。周年事業推進の度に感じたことは、人との和であり、共に創ることの大切さであった。すべてが「お蔭さま」の内にあった。ありがたい出会いに感謝であった。

京都光華での最後の数年間はキャリアセンター、女性キャリア開発研究センターの職員として、窓口で、教室で、直接学生へのキャリア支援を行う機会を得た。窓口相談では、一人ひとりと向き合い、思いを聴き、私自身の経験も交えて話をした。

常々伝えてきたことは、お互いを思い合って認め合うこと、心の在り方を大切にしてほしいということ。相手の立場に立って考え、相手の素晴らしいところを見つけられる人になってほしい。「光華人生」の後半に、これまで私が感じてきた思いを学生に伝え、応援することができたのは、とてもありがたく、やりがいのあることであった。

そして今春、定年退職を迎えた。引き継ぎを済ませ、キャンパスを歩いてみる。長年見慣れた花や樹木は、今年も変わらずその場所で季節を美しく彩り、ここに集う人を見守っている。これからもこの学園は、学生生徒たちに寄り添い続け、素敵な女性を育んでいくことであろう。

私にとって、ここでのすべての人との出会い、ご縁が人生の宝物となっている。私を育ててくれた大切な学び舎、この学園。

誰もが「京都光華で過ごしてよかった」と心から思える場所であってほしいと願い、応援し続けたい。

学園の、輝かしい未来に思いを馳せる。

私の人生のキーワード

“出会いからの学び”

学園の各部署ではさまざまな出会いがあり、その関わりの中から多くのことを学ばせていただいた。そして最後の部署、女性キャリア開発研究センター。学生と向き合い、一人ひとりの素晴らしさを引き出し、応援していく…。成長を見守り、その人生に寄り添うこの仕事が、京都光華の職員としての大きなやりがいと学びの場となった。

出会いからの学び

“愛する心を大切に”

人を愛し、自分を愛せる人間に。京都光華が大切にしている“おもいやりの心”を胸に、何事にも愛情を持てる温かい人になってほしいと思う。知識やスキルだけではなく、人間性を認められ、必要とされる人になれるよう、社会に出るまでの大切な時間である学生時代に、ここでたくさんの人と出会い、たくさんの話を聴いて、心を豊かにしてほしい。凛として、美しく生きる女性となられるよう、応援し続けたい。

愛する心を大切に

“卒業生として伝えていきたいこと”

学部学科が変わり、学びの分野も多種多様に改変されてきたが、光華教育の根幹にある建学の精神は不変であるはず。卒業生の皆さまと共に、母校の素晴らしさを次世代に語り継いでいきたい。温故知新、先人が築かれた伝統と歴史に感謝し、学園のさらなる充実を心から願う。「光華」で学んだ伝統文化の伝承も、ライフワークとしたい。

卒業生として伝えていきたいこと
卒業生・旧職員 真東 美也子
卒業生・旧職員真東 美也子 Mahigashi Miyako

光華中学校高等学校を経て光華女子短期大学へと進学、短大卒業後は光華女子学園の職員として勤務。2018年3月で定年を迎えるまで、48年間を京都光華で過ごす。結婚・出産・子育てを経験しながら、総務・庶務・学事・学長秘書・広報・小学校事務といった部署で勤めあげ、2012年からはキャリアセンターマネージャー、2016年からは女性キャリア開発研究センター副センター長としてキャリア教育に携わり、学生たちを見守ってきた。また、能楽師の娘として、父、兄弟と共に能楽部の指導にも携わる。その道程はまさに「光華人生」と言える。 ※学校名は入学時のものです ※2018年度取材