「道の向こうに感動が待っている」 本学卒業生の芸術家 月風かおりさん 南極での創作活動を前にインタビュー
月風 かおり さん光華女子短期大学卒
2015年01月07日更新
12月12日、本学短期大学部ライフデザイン学科の授業「女性のキャリアデザイン」(担当教員:脇田 哲志教授 国際ジャーナリスト)に、風書家(ふうしょか)の月風かおりさんを講師としてお招きしました。
月風さんは本学短期大学(現:短期大学部)の卒業生で、このほどアルゼンチン政府から招聘を受け、南極にあるアルゼンチンの基地に滞在して、ご自身が「風書」と名付けられた墨象の創作を行うことになりました。
世界各地を駆けめぐって創作を続けて来た月風さんの目標は世界7大陸の踏破だそうですが、そのうち南極は、これまで科学者が中心の世界で、芸術家はなかなか滞在が認められませんでした。
しかし、アルゼンチン政府がこのほど、南極に芸術家を招いて創作活動をしてもらうという『極地芸術プログラム』を行うこととなり、世界中から応募したアーティストの中から月風さんがそのメンバーにみごと選ばれました。
南極への出発準備にお忙しいさなかにもかかわらず来学してくださった月風さんに、学生時代から現在に至るまで、いろいろとお話を伺いました。
Q.本学に入学されたきっかけや印象に残っていることを教えてください。
A.兄が京都の大学に通っていたため、京都の大学に進学したいと思っていました。当時、光華女子短期大学に家政科があり「日本人としての教養を大切にする」という方針から英語や書道も学べることに魅力を感じました。在学中に得た2つの考え方「人にはさまざまな個性があり、人は違っていていい」「相手を否定せずに受け入れよう」は、今でも私の感性の根底にあるものです。
Q.海外での創作活動で最も印象に残っている出来事は何ですか?
A.世界に195カ国あるうち25カ国を訪れました。印象に残っている国は、西アフリカのマリです。 マリは、世界で190番目に貧しい国と言われています。私がわずかな食事を摂ろうとした時でも、周りに人が集まってきました。分け与えたいけれど、食べないと自分も息絶えてしまう・・・。 そんな時、助けてあげたくても助けることができない状況で、自分は一体何ができるのかを自分の胸に問いかけました。この経験を人に話すこと、伝えること。そして、一人でも多くの人に世界の現状を広めることではないかと感じたのです。
Q.現地をオートバイで移動されるとのことですが、旅の必需品は何ですか?
A.必要最低限の旅の道具、筆、紙の3つです。 筆に関しては、作品によって持参する種類を変えています。例えば、大作を描くときは長い毛先の「馬毛」。それと短い毛先の「羊毛」です。他に、作品に応じて白鳥・いたち・たぬき・くじゃく・竹など種類を組み合わせてバッグに準備します。
Q.紙が濡れてしまうことはありますか?
A.はい、その場合に備えて紙の代わりとなる布も持っていきます。 もし道具がなくても、石で土に文字を書いたり、油性ペンで石に漢字を書いて、地元の人たちにプレゼントをすることもありますよ。漢字を書くと今まで訪れたほとんどの国で喜ばれました。中には、その石を宝物のようにしてくれる子どももいました。
Q.旅をすることで見つけた物事の捉え方はありますか?
A.人種や民族や言葉が違っても人の温かさは同じであり、異国で違いを楽しむことが大切です。その中で得た私の「目標を見つけるための五か条」があります。
①好奇心は自分を動かす(何が自分に合う仕事なのかが分かりました。)
②やりたいことをやる(つまずいても自分で納得いくまでやり続けます。)
③トラブルは発見(非日常での経験で得るトラブル回避方法は大きな発見です。)
④最後は人に行き着く(人種や言葉が異なっても、人の温かさは同じ。心のふれあいを体感します。)
⑤道の向こうに感動が待っている(目標を持って動くと、その先で何かが掴めます。)
Q.このたびアルゼンチン政府から招聘を受け、南極にあるアルゼンチンの基地に滞在して、ご自身が「風書」と名付けられた墨象の創作を行うことになりました。
南極滞在における目的と現地で実現したいこと・不安な点を教えていただけますか?
A.南極にあるアルゼンチンのエスペランサ基地に滞在します。
そこでの風書活動における目的は2つあります。
①現地で作品を書くこと
②日本で個展を開催すること
現地で実現をしたいことは、南極でのラジオ出演です。地球の最南端でラジオ出演ができれば光栄です。不安な点としては、飛行機での過ごし方です。アルゼンチンの軍用機で南極へ行くそうですが、飛行機の爆音の中で睡眠が取れるのか不安です。軍用機に乗ることの想像が付かない分、アドベンチャーとしての覚悟を持っておこうと思います。
最後に、後輩の学生たちに、人生に変化をもたらすためのアドバイスがあれば教えてください。
A.目標をしっかり持って行動することが大切ですが、その目標を描く手段として「本で調べる」ことが重要なのではないでしょうか。 自分で苦労して得た情報は、記憶に鮮明に残るからです。 それらを踏まえて3つのアドバイスとして
① 良い本に出会うこと
② 人に出会うこと
③ 旅に出ること
シンプルですが、非日常の現実を得ることで発見と感動を感じます。 また自分をじっくり見つめる機会にもなるでしょう。 学生のみなさんも、自分らしい生き方や自分に合う仕事をぜひ見つけて充実した人生を歩んでください。 月風かおりさん、貴重なお話をありがとうございます。 月風さんの記事はこちらでもご覧いただけます。 https://www.koka.ac.jp/news/1592/