人間健康学群では、健康を身体的、心理的、社会的な観点で捉えて、栄養学、運動学、心理学、社会福祉学など健康に関する多様な専門領域を学びます。人の健康に影響する要因に関する研究として、「健康の社会的決定要因(Social determinants of health; SDH)」があります。SDHは、健康は生物学的な要因だけでなく社会的要因が存在する、健康問題は個人だけに起因しない構造的な問題である、という考え方です。
このSDHを説明するモデルとして、Dahlgren とWhiteheadによるレインボーモデルがあります。このモデルでは、SDHとして以下の要因があります。
・生活環境:教育、収入、雇用、労働環境、衛生環境、医療体制、農業・食物生産、住居
・社会関係資本(ソーシャル・キャピタル):社会・地域ネットワーク
・生活習慣
たとえば上記の「教育」は、健康に影響します。教育を受けることで健康に関する知識が増え、予防策や治療法について理解が深まります。さらに、教育は収入の向上や職業の安定をもたらし、ストレスや健康リスクを軽減する可能性があります。
また、たとえば上記の「社会関係資本」は、健康に影響します。良好な社会的ネットワークや支援は、ストレスの軽減や精神的健康の向上に寄与します。信頼できる友人や家族からのサポートは、病気の予防や治療の効率を高め、健康行動の促進にもつながります。逆に、社会的孤立や疎外感は、健康リスクを増加させる要因となります。
さらに、たとえば上記の「生活習慣」は、「社会的要因」そのものというより、社会的要因の影響を強く受けます。たとえば、上記の「労働環境」において、過重労働や不規則な勤務は、睡眠不足や不健康な食習慣を引き起こす可能性があります。また、ストレスや長時間のデスクワークは、運動不足や精神的健康の低下を招くことがあります。
人間健康学群では、身体的、心理的、社会的な健康を検討するうえで、SDHは非常に重要なキーワードの1つとして教育研究しています。SDHをポジティブにすることで、多くの人や社会の健康増進につながります。人間健康学群でSDHを研究して、人と社会の健康増進に貢献していきましょう。
参考文献
武田裕子2023作業を困難にする「健康の社会的決定要因(SDH)とは?作業療法、42巻、2号、pp.129-134 Cinii論文リンク
文責 酒井浩二