最近、我が家では子どもが学習漫画の伝記を読むようになり、偉人についての話で盛り上がっています。子どもの一番のお気に入りは、現在の紙幣の千円札の肖像に使われている「野口英世」です。
皆さんも一度は読まれたことがあると思います。
さて、私が子どもの頃読んだ「野口英世」は世のため人のためひたすら研究に打ち込む聖人君子のような人物でした。また、お母様の「シカ」さんの子どもを思う気持ちに胸を打たれたものです。
そんな「野口英世」が完璧な人間ではなく、欠点もある人だと知ったのは、学生の頃、ショートショートの神様として有名な「星新一」が書かれた「明治の人物誌」を読んだときです。なんとあの「野口英世」が金遣いが荒く、渡航のための支度金としてひとに工面してもらったお金を出航前に使い果たすなんて・・・。初めて知ったときはショックを受けました。
時が流れ、新しい伝記を手にし、子どもと一緒に読んでいくと、驚くべきことに子ども向けの本にもかかわらず、彼がいつもお金に困っていたことや、金遣いが荒かったことなど、ちゃんと書かれていたのです。
新しい伝記には、「野口英世」自身、生前に出版された自分の伝記を読み、美談ばかり書かれた内容に不快感を示したということも記されていました。
人間には良い面も悪い面もあるものです。昔は、偉人の欠点を知ってショックを受けましたが、今はむしろその弱さゆえに偉人といえども人間だと親近感を抱くようになりました。歳を重ね、「清濁併せ呑む」ことを少し覚えたのかもしれません。
とはいえ、野口英世を尊敬する子どもを見て、見習うのは良い面だけにしてほしいと切に願う私でした。
礪波 朋子(2016年5月18日)