本日は、キャリア形成学科の学びの一つである現代社会学の中から、社会的孤立をテーマに、若年性認知症を取り上げます。
皆さんは、「若年性認知症」という言葉を聞いたことがありますか?
認知症と聞くと、一般的には高齢者に多い病気というイメージがありますが、若年性認知症はその名前の通り、若い世代にも発症する可能性がある病気です。
若年性認知症は、65歳未満の若い年齢で発症する認知症を指します。
症状は高齢者の認知症と変わりませんが、身体面や心理面、社会活動が年代によって異なるため、自身や周囲の人に与える捉え方や影響が異なり、その方に応じた支援が必要になります。
若年性認知症の原因は多岐にわたりますが、中でもアルツハイマー型認知症:は、若年性認知症の中でも最もなりやすいと言われています。
ちなみに高齢者の認知症の原因の多くも、アルツハイマー型認知症です。
また症状は多岐にわたりますが、以下のようなものが一般的です。
- 記憶障害: 最近の出来事を思い出せない、約束を忘れるなど。
- 判断力の低下: 日常的な意思決定が難しくなる。
- 言語障害: 言葉が出にくい、会話が難しくなる。
- 行動の変化: 無気力、興奮、攻撃的な行動など。
そして若年性認知症は、働き盛りの世代に影響を与えるため、仕事や家庭生活に大きな影響を及ぼし、経済的な問題や社会的な孤立、家族への負担などが生じることが多いです。
しかし、それを覆すような情報に出会ったことで、若年性認知症に対する見方や考え方が変わりました。
その記事がこちらです。
【若年性認知症当事者 下坂厚さんインタビュー】大好きな写真で、認知症当事者として今の思いを発信|SOMPO笑顔倶楽部 (sompo-egaoclub.com)
下坂厚さんは、京都市在住で2019年8月に46歳という若さで、アルツハイマー型認知症と診断されましたが、現在は西院デイサービスセンターで正社員として働きながら、高校生からの趣味である写真をSNSで発信すると共に、認知症の啓蒙活動を続けておられます。
また、『記憶とつなぐ 若年性認知症と向き合う私たちのこと』の書籍も出版されています。
現在の状況だけを抜き取ると一般の方と変わらない感じもしますが、若年性認知症と診断されてから、現在に至るまでの背景を探ると想像を絶する孤独感や恐怖心に襲われていたことが分かります。
しかし、奥様や周囲の方に支えられながら、若年性認知症になったことで何を教えてくれているのか、起こった出来事に対して目を背けず向き合い続けた結果、生きる意味や本質を見つけ、できないことではなくできることに目を向けながら生活されている様子が伝わりました。
ここから先は、下坂さんが若年性認知症になった経緯から現在に至るまでの軌跡をお伝えします。
下坂さんは大手の鮮魚専門店で一緒に勤務していた仲間と新たな鮮魚店を立ち上げ、これからチャレンジしていこうと希望に満ち溢れていた時に、若年性認知症だと診断されました。
診断の一か月前から、お店に行くまでの道を間違えたり、忘れ物が増えたり、一緒に働く仲間の名前が出てこなくなり、これはおかしいと思い病院に行ったところ、若年性認知症だと診断されました。
それから変わっていく自分の姿を見られることに抵抗があり、始めたばかりの仕事も退職し、次の働き口を探したものの十分な対応を得られず、今まで頑張って働いた仕事も、新しい仕事も就けず、自分の居場所がないと生きる望みを失いました。
また、下坂さん自身は子供のころから何でも自分で考え、自分で解決する自己完結型の性格で、誰かに悩みを打ち明けたり、頼ったりすることが苦手であったため、奥様に伝えたらショックを受けるだろうと、しばらくは言い出せませんでした。
それから一年後、下坂さんに転機が訪れ、デイサービスで働いてみないかというお声がかかった。
その話を持ち掛けられた時は、そんなことを考える余裕がなく、介護の仕事も経験したことがなかったため、当初は引き受けるつもりはなかったそうですが、いきなり断るのも申し訳ないと思い、やってみることにしました。
もちろん最初からうまくいったわけではないですが、お仕事を通して「生きるとは何か」と向き合うようになり、認知症になって気づかされたことが多々あったようです。
その一方で、メンタル面や経済面の支援が不足していることが浮き彫りになり、家族や周囲の人にカミングアウトするのはとてもハードルが高いことだと思いますが、打ち明けることで誰かの光になることを実感し、少しでも希望を見出しながら過ごしています。
コモンズ職員がこの記事を読んで、ニーチェの『事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである』という言葉とリンクしていると感じました。
誰しも自分にとって不都合な出来事が起こったとき、「どうしよう」と不安に襲われたり、時には生きる希望を見失うこともあります。
下坂さんもまさか自分がこのタイミングでなるとは思っていなかったと思います。
ましてや一人で抱え込む性格であることから、一人でたくさん悩んで孤独感や恐怖心と闘っていたことが伝わりました。
しかし、少しの希望を見失わず今自分にできることは何かと切り替え、今では介護のお仕事をされたり、写真家として活躍されています。
「認知症になったから、もうだめだ」と思うのか、「自分にできることは何だろう」、「この出来事が教えてくれていることは何だろう」と現実から目を背けなかったからこそ、闇だと感じていたことが誰かの光になり、下坂さんにしかない人生を歩めているのだと感じています。
私自身は現代社会学の専門ではないので、具体的な政策や「こうしましょう」とは言えませんが、まずはその実態を知り、そこから何が学べるのか、学んだことを実生活で活かせる方法はないか、自分なりに考えて行動に移すことが大切だと考えています。
「こんなことで解決に繋がるのか」と一見繋がらないように思えることでも、ちょっとしたきっかけや行動が誰かの光になると思っています。
私には関係ないではなく、直接助けることはできなくても何かできることはないか考えて日々過ごすだけで、充実度や人生の質も変わると考えています。