皆さんは学校でどのような「道徳」の授業を受けていたのでしょうか。物語を読んでワークシートに答えるだけ、あるいはその時間を文化祭や運動会の準備に充てるといった経験をしたことがあるかもしれません。
日本における道徳教育は、戦後、学校教育全体を通して実施されるべきであると考えられ、教科として位置付けられてはいませんでした。それが2015年に「学習指導要領」の一部改訂によって「特別の教科 道徳」として新たに位置づけられるようになりました。そこで目指されているのは、「認知的側面(道徳的理解力・思考力・判断力)」、「情意的側面(道徳的心情・実践意欲・態度)」、「行動的側面(道徳的行動力・習慣)」を含んだ道徳性を学校教育で育んでいくことです。
このようにして、学んだことが実践できる資質・能力の育成に資する「考え議論する道徳」への質的転換が行われるようになりました。
京都光華女子大学こども教育学科では、「道徳教育の理論と指導法」という授業を設定して、小学校教員に必要な以下の知識とスキルを身につけていきます。
・道徳性に関する学問的知識の学習.
・学校教育における「特別の教科 道徳」の目的及び意義の理解.
・授業研究やパフォーマンス課題などを通した実践的指導力の習得.
各取り組みについて簡単に紹介すると、
道徳性に関する学問的知識の学習
・・・ 道徳性の発達や捉える次元(個人/社会・共同体)に関する学問的立場と理論について学び、授業デザインに活かすための知見を得ます。
優れた実践事例を使った「授業研究」
・・・ 授業デザインに先立って、優れた実践事例から授業の構成要素や実践におけるノウハウなどを学びます。「授業研究」は、よりよい授業のあり方について考え、指導力を高めていくための一つの方法としてとても有効です。
パフォーマンス課題「授業デザイン」
・・・ 道徳的価値を多角的・多面的に吟味し、合意形成を目指して継続的に話し合っていくための「考え議論する道徳」、その実現に向けて授業をデザインします。その際、道徳教育の方法論や指導技法、教材分析などのスキルも身につけ、これまで学んできた知識をフル活用しながら個性あふれる授業を提案していきます。
ルーブリック*を使った「ピア評価*」
・・・ パフォーマンス課題に対する評価の観点や判断基準の偏りを防ぐこと、そして自分の実践に対するより深い振り返りが可能になるように、他者の創作物を評価する活動を行います。この過程を通して、他者の実践から学び、今後の参考になる気づきを得ることができます。
メタ認知*を援用した「自己評価」
・・・ 特定の様式を使って、パフォーマンス課題の準備段階から実践後までを振り返ることで、「授業デザイン」を完成させるまでのプロセスを客観的に認識することができます。これによって自分に適した学習・作業のスタイルが見えてくるので、今後の実践にも活かすことができます。
*メタ認知:自分の思考や行動そのものを対象化して、原因や成果などを客観的に捉えること。
このように本授業では、日常生活に生きて働く道徳的資質・能力の育成に向けて、小学校教員に必要なスキルを身につけていきます。
(学校教育コース、全 京和)