モーリス・センダック作『かいじゅうたちのいるところ』は、マックスという男の子がかいじゅうたちと一緒に大暴れするシーンが印象的な絵本です。独立心と依存心を行き来する心情が描かれており、ハチャメチャな展開の中に味わい深さが込められている絵本です。
4年生のKさんはすっかりこの絵本の魅力に惹きこまれ、卒業研究の題材として取り上げ、調査を進めています。
この絵本は、1963年『Where the Wild Things Are』の題でアメリカで出版されました。まだ絵本文化への理解が十分でなかった時代で、この絵本に対して教育的でないと批判する人たちもいたそうです。しかし、子どもたちには強い支持を受け、高い芸術性を認められるようになります。
日本に紹介されたのは1966年です。『いるいるおばけがすんでいる』の題で、七五調の言葉に意訳されたものでした。
その後、1975年に神宮輝夫さんの訳による『かいじゅうたちのいるところ』の題で富山房から発刊され、100万部の売り上げを遂げています。つまり、原題の「Wild Things」を「かいじゅう」と訳したのが神宮輝夫さんなのです。「この かいじゅう!」「かいじゅうおどりを はじめよう!」と語らせたのです。
当時は日本においても絵本の黄金期、と呼ばれるほど、豊かな絵本文化が急激に繰り広げられ、優れた欧米絵本の邦訳も重ねられていました。そのような時代をつくった絵本作家、訳者が、年齢を重ねられ、このように天へお見送りすることも頻回になってきました。
今、Kさんは、『いるいるおばけがすんでいる』と『かいじゅうたちのいるところ』の比較に取り組んでいます。ゼミ仲間も一緒に、この絵本のおもしろさを語りあえる時間を大切にしたいと思います。