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教員コラム

伝統文化教育の必要性について

子どもたちに伝統文化を教えることは、教育基本法の中でも求められています。では、なぜ、学校教育で伝統文化を教えることが必要なのでしょうか。その理由は、およそ次のようなことが考えられます。

 

 その一つは、グローバルな社会では、日本人としてのアイデンティティーをしっかり持った上で、文化の異なる人々と交流することが必要といわれますが、実はこのアイデンティティーは、歴史や伝統文化の中で培われるからです。私たちは、伝統文化に触れる中で、日本人として大切な価値観や感性を身につけているのです。自国の文化の素晴らしさを再認識するとともに、その文化を大切にする心や自国への誇りをもつことは大切ですね。

 

 その二つは、わが国には、歴史的文化遺産、伝統芸能、食文化など豊富な文化資源がありますが、この文化資源は、外交、経済と並んで、日本国のみならず、世界をも動かす強力なソフトパワー(影響力)を持っているからです。日本文化が「クールジャパン」として広く世界で評価され、外国人観光客も多く訪れます。このため、学校教育等を通して積極的に伝統、文化の継承・保存に努めていくことが求められます。しかも、この文化資源は、枯渇しない資源とさえいわれます。

 

 その三つは、商品の価値は、一般に機能性(便利さ)や経済性(安さ)とともに、伝統や文化によって育まれた感性によって決まるといわれます。日本らしい、個性豊かな商品は、伝統文化を通して培われた日本人独特の感性によってつくられます。グローバルな社会が進展すればするほど、画一的な商品よりも、日本人固有の感性によってつくられた、個性豊かな商品が人気を博するというわけです。和紙を使った照明器具(写真)など、現代テクノロジーと伝統工芸が融合して新しい製品が開発されるのはその好例といえましょう。

 

 このように、学校で伝統文化を教えることの意義は大きいものがあります。国際社会では、日本人としてのアイデンティティーと素養をしっかり持って、文化背景の異なる人々と付き合っていくことが求められます。私たちは、世界のどこでも通用する、抽象的な国際人として生きるのではなく、先ずは、過去からの伝統文化の中で良き日本人として生き、自らのアイデンティティーを形成した上で、他国の人々と相互に理解を深めながら交流してこそ、真の国際人といえるのではないでしょうか。本学科では、グローバルな社会に対応するため、英語教育とともに、仏教精神に基づく教育や伝統文化の教育にも力をいれており、日本人としてのアイデンティティーと国際感覚をもった専門職業人としての教育者・保育者の養成をめざしています。

聞光館の照明器具

聞光館のシャンデリア