現在、幼児教育コースの1年生は、「社会福祉」の授業で、「障害」の概念や障害児・者に関する制度・サービス等について学んでいます。環境が整っていたり、周りの配慮があったりすれば、障害があってもできることはたくさんあります。授業では、まずはそのことを学んでもらっています。そして、その考え方をベースに、障害のある子どもと出会った際に、保育者・教員としてその子どもが持っている力を発揮できる配慮を考えていくことが大切になります。
学生の授業の振り返りを読むと、小学校などで障害について学んだ経験や障害のある方とかかわった経験がある人、ない人もいて、その捉え方はさまざまです。なかには、「これまで『障害者=何もできない人』と捉えていた」と書く人もいて、障害について学ぶことの必要性を感じます。
少し前の話になりますが、5月17日から25日まで神戸 2024 世界パラ陸上競技選手権大会が開催されていたため、観戦に行ってきました。スタンド席は、日本人、外国人、障害のある人、ない人が入り混じるまさに「多様性」を感じる状況でした。そのなかには、招待された兵庫県内の小中学校や特別支援学校などの子どもたちもいました。
この日は、競技用車いすや義足の選手の短距離走、下肢に障害があるため助走なしで「投てき台」から放つやり投げなどが行われていました。選手の一挙一動に子どもたちの甲高い歓声が響き渡り、大会を盛り上げます。ただし、視覚障害の方の競技では、子どもたちも含めスタンド席が静かに見守る時間があります。短距離走のスタートのピストル音や走り幅跳びでの踏切位置を声や手拍子で誘導する「コーラー」の声、それらが選手に聞こえないと競技結果に影響するからです。
競技を終えた選手のなかにはスタンド席に挨拶に行く人もいて、子どもたちが嬉しそうに声をかけ、手を振ったり、駈け寄ったりする姿が印象的でした。
パラ陸上の選手やその方たちをとりまく物的・人的環境を目の当たりにした子どもたちは、きっと『障害者=何もできない人』とは思わないでしょう。教育のなかで、子どもたちに何をどのように経験してもらうのか、その意味を改めて感じた一日でした。