今回のNewsは、学科長の井上先生から、夏の思い出について教えていただきました。
去年の夏、パリでの乗り継ぎを経て、夫婦で南フランスを巡る旅に出ました。
旅の始まりは、ワインの聖地ボルドーからです。
ブルス広場に設けられた「水鏡」には、ヨーロッパらしい重厚な建物が見事に映り込みます。
薄く張られた水面は、気温30度を超える中、子どもたちの格好の水遊び場となっていました。
翌日はワイナリーツアーに参加しました。
どこまでも続くブドウ畑の緑と青空のコントラストは、心が洗われる思いがする光景です。
とりわけ印象深かったのが「シャトー・サス・スプリーン」。
ここには右足用が二つ並んだ「売れ残り」という名の巨大な長靴のオブジェが佇み、
美しい池、そしてもちろん極上のワインがありました。
まさにフランス人のエスプリ(機知)に触れたひとときでした。
次に訪れたマルセイユは、真夏の太陽が照りつける港町。
35℃を超える気温は私たちの年代には少々堪えましたが、
夕暮れと共に港へ繰り出し、名物のブイヤベースを堪能しました。
恐る恐る挑戦した生ガキも、忘れがたい味です。
この旅のハイライトの一つは、“フランスの最も美しい村”を訪ねるツアーでした。
セザンヌゆかりの街エクス=アン=プロヴァンスで買ったサンドイッチを、
ガイドさんが見つけてくれた美しい並木道に車を止め、
心地よい風が吹き込む車中で頬張ったのですが、
これは格別のピクニック気分を味わわせてくれました。
訪れたルシヨンとゴルドの村々は、想像していた素朴さとは少し趣を異にし、
石造りの家々が歴史を物語るような落ち着いた佇まい。
それでも大都市にはない、穏やかで温かい空気が流れていました。
マルセイユからTGVで向かったのは、美食の街リヨンです。
評判のビストロでいただいたのは、名物の「クネル」。
カワカマスのすり身を焼いた、ふわふわとした料理です。
たとえるなら「でき立てのキングサイズの高級はんぺん」といったところでしょうか。
美味だったのですが、前菜で満たされていた私にはいささか大きすぎたようです。
一方で、妻はタルタルステーキをぺろりと平らげていましたが。
旅の終わりはパリで、旧友との再会が待っていました。
かつて息子たちが神戸の保育園で同級生だったフランス人の友人夫婦が、今はパリ郊外で暮らしています。
ご自宅で昼食をいただきながら、古い写真に懐かしい話が弾みました。
食後には、ご夫婦お気に入りの散歩道へ。
パリ中心部から電車で1時間とは思えないほど自然豊かで、穏やかな時間が流れる場所でした。
私にとって、ここもまた、かけがえのない“フランスの美しい村”だと感じ入りました。
最後に台風で帰国が一日延びるというハプニングもありましたが、それもまた良い思い出です。
フランスの地方都市と田舎が持つ奥深い魅力を、心ゆくまで味わった旅となりました。