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授業紹介

離乳食 取り分け食ってなに?

3年生前期に行われている応用栄養学実習の授業では、赤ちゃんから高齢者、そしてスポーツ選手などを対象とした栄養管理について学修します。
今回は、私たちの班で取り組んだ『11か月 女の子 卵アレルギー』の模擬栄養管理についてご紹介します!

模擬栄養管理では次の①〜⑤の手順で行いました。

①栄養評価・診断 
②栄養ケア計画の立案 
③献立作成
④調理実習
⑤モニタリング

これから、1つずつ紹介します!

①栄養評価・診断
まずは栄養に関連する課題を見つけ、栄養状態について評価し、栄養診断をします。

症例には次のような課題がありました。

・授乳・離乳の支援ガイドにおいて11か月の乳児は1日3回食です。しかし、症例の女の子は1日2回しか食べていない。
・食事調査による摂取エネルギー量が、目標量(日本人の食事摂取基準)を下回っている。
・身体発育曲線が3か月間で25パーセンタイル値から10パーセンタイル値へ下がってしまっている。

このことから、私たちは今回の症例について「たんぱく質・エネルギー摂取量不足」と栄養診断をしました。

さらに、栄養ケア計画を立てるためには何が原因で今の栄養状態となってしまっているのかを考える必要があります。

そこで女の子のお母さんが、「離乳食をどうしたら良いか分からない」とお話されていることに注目し、お母さんにアレルギーに対応した食事作りに対する知識が不足しており、食事や育児に不安を感じていることが原因と考えました。

②栄養ケア計画
次は①の栄養評価・診断に基づき、栄養ケアの計画を作成しました。栄養ケア計画では、先程挙げた課題と原因を解決することを目標に、次の3つをポイントにしました。

・保護者の知識習得を目的に、
・栄養士が卵アレルギーでの代替となる食品や注意が必要な食品の紹介をする
・栄養士が離乳食の段階の目安や、負担軽減方法の紹介をする
・食事量不足の解消を目的に、
・栄養士が1日3回食の習慣化のためのアドバイスをする

実習では、①栄養評価・診断、②栄養ケア計画、③献立作成について、パワーポイントを活用した発表を行いました。
その中で、卵アレルギーに対する代替食品や注意事項、取り分けによる離乳食作りの紹介を行い、実際に調理をし理解が深まるようにしました。

③献立作成
11か月の離乳食には次のような特徴があります。

・固さの目安:歯茎でつぶせる程度
・大きさの目安:1-2cm程度
・味付け:調味料は風味程度ならOK
・手掴み食べがはじまる

私たちの班では、家庭での離乳食作りの負担が少なくなるよう「取り分け食」に挑戦してみました。(取り分け食とは、大人の食事作りの途中で食材を取り分けて離乳食を作る方法です!)

家族のメニューにも配慮して作成した献立はこちら!

・鶏ひき肉と小松菜の豆乳うどん
・かぼちゃのしらす入りおやき
・りんごのコンポート

それぞれのメニューには色々な工夫をしました。

【鶏ひき肉と小松菜の豆乳うどん】

取り分け食の実践として、大人用の豆乳うどんを作る途中に、離乳食用のうどん・肉・小松菜・汁を取り出す形にしました。取り出したうどんと小松菜は1-2cm長さに切り、味付けは豆乳の濃厚さで十分に美味しく食べることができたので調味料は使いませんでした。
事前の試作では大人用の味付け選びに苦戦しました。醤油や味噌、ラー油、豆板醤などを試作してみて、一番おいしかった味噌を使うことにしました。

【かぼちゃのしらす入りおやき】

副菜には、調味しなくてもおいしく食べてもらうことができる野菜として、かぼちゃを選びました。また、手掴み食べがはじまる時期を考慮して、潰したかぼちゃにしらす干しと片栗粉を加え、丸めて焼いたおやきを作ることにしました。
このメニューは取り分けではなく、大人用も離乳食用も同じように作り、出来上がったおやきを手掴みしやすいようにカットする工夫をしました。

【りんごのコンポート】

デザートには、りんごに砂糖とレモン汁を加えて煮るだけのコンポートにしました。こちらも、おやきと同じように大人用と一緒に作り、離乳食用は出来上がったコンポートを小さく刻みました。
食べやすいように細かく刻んだのですが、食べると「舌でつぶす」ことができる固さに仕上がっていたので、大きくても良かったかもしれません。

献立を作りながら苦戦したのは、これは離乳食には使えない食材じゃない?とか、卵アレルギーってこの食材は使える?エネルギーや栄養素量は適切?など考える点がたくさんあることでした。班のメンバーでこれらを一つひとつ確認しながら献立作成を進めました。

④調理実習(プレゼンテーション)

担当症例を発表する日が班ごとに決まっており、当日は、まず①〜③に関するプレゼンテーションを行います。
その後、調理実習では取り分けのタイミングに注意しながら班で協力して離乳食と大人用の食事を作りました。

作成後は、味やボリューム、そして固さなどが対象者に適したものになっているかを確認しながら試食をします!
今はコロナウイルスの影響で、調理実習の試食は個食&黙食で10分以内に食べ終わるようになっているので、みんな必死で食べています。

今回の離乳食を食べる11か月の子どもはまだ奥歯が生えていないため、歯ぐきでつぶせる固さが目安になります。
短い時間ではありましたが、「舌でつぶせるかな?」「奥の歯がない部分の歯ぐきでつぶせないかな?」など、試行錯誤して固さを確認しながら試食をしました。

調理と試食終了後には、クラスメイトや先生からフィードバックもいただきました。

課題として挙がったのは主に2つでした。

・おやきのカボチャの水分が少なく、おやきが少しパサパサになってしまった。
→これは先生から子どもの「もぐもぐ」と「ごっくん」の練習に繋がるよ!と言っていただきました。
・りんごのコンポートが離乳食にはちょっと甘すぎた。
→これは、りんごの甘さを作る前に確認して砂糖の量を減らすべきだったと反省です。

⑤モニタリング

実習は、これだけでは終わりません! 調理実習後に、11か月の女子のお母さんになったつもりで答えてもらうアンケートを実施しました。
このアンケートの回答を分析して、今回の栄養管理計画がうまく行うことができたかを総合評価(モニタリング)します。

今回は擬似的なモニタリングとして、女の子の3-6か月後を想定して答えてもらいました。内容にはカウプ指数(乳幼児期の体格が判断できる指標)や離乳食への負担感、卵アレルギー代替食への理解度などを盛り込みました。
分析の結果では、栄養士が保護者に離乳食の知識を伝えることが乳児の発達に良い影響を与える可能性が高いことがわかりました。

このように応用栄養学実習では、講義で学んだ知識を実践するような形で栄養管理への理解を深めています!
夏からは臨地実習も始まるため、知識を現場で使いこなせるようになるために、日々鍛錬します!