京都光華女子大学 健康科学部 心理学科 ニュース 新時代を拓く才能―オリンピックTV観戦より①

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教員コラム

新時代を拓く才能―オリンピックTV観戦より①

2018年冬季オリンピックが始まり、毎日のようにTV観戦をしています。冬の種目ではフィギュアスケートが一番好きです。華やかさに魅せられる競技なので、オリンピックシーズンでない年も、私はまめに選手たちの活躍をチェックしています。

実は以前は、フィギュアスケートを真剣に見ることはありませんでした。たまたまテレビをつけて目に入った選手の演技に目を奪われたことが、ファンになったきっかけです。それは2014年ソチ五輪のもう1つ前、2010年バンクーバー五輪で日本男子初のメダルを獲得した、髙橋大輔さん(当時23歳)の、まるでミュージカルを観ているかのような豊かな表現に引き込まれる演技でした。ピエロの葛藤をコミカルに演じた名演です。

バンクーバー五輪でも、浅田真央さんと共に、メダル獲得のプレッシャーが大きかったはずです。何よりも難しいジャンプが重視されるアスリート的側面が強い男子フィギュア界で、これまでにない「音楽を体で歌う」かのような表現力を備えた男子選手が現れたことによって、男子の世界でも、芸術性がより重視される方向へ世界の評価基準を変えたということが、今なお、世界中のトップ選手から憧れのまなざしで見られる理由なのです。

実は私は、以前の髙橋大輔さんの演技はそれほど好きでなく、わざわざ見ることはありませんでした。どうしても彼の若さが子供っぽく見えてしまい(10代でしたので当然ですが)、演技に見える強烈なパッションが、たんなる目立ちたがりの少年のように映っていたのです。「あふれるパッション」を「にじみ出るパッション」へとコントロールするのは、技術というよりは、人間としての成長によるところが大きいのだろうと、自分なりに想像しています。

髙橋大輔さんは、今もそうだと思いますが、振付家が「ぜひ彼に自分のイメージする演技をさせたい」と考える、そのような存在であるようです。そのためには、高度なテクニックが備わっていることは無論のこと、実際にそれを振付家が意図したように表現する才能が必要となります。音楽を使うこのスポーツは、その音楽がどのような感情に訴えるのかを感じ取り、それを上手く技で構成する「振付家」が支える部分も大きいようです。

「振付家」が「この選手にはこれを滑らせたい」という気持ちにさせられるのは、目に見えず、また言葉や数字では伝えられない「何か」を持っているからでしょう。それ以来、裏舞台もマスコミで取りざたされることがありますが、フィギュアスケートの華やかさには、それなりの理由があるだと思いつつ、ファンとして応援をしています!

石谷みつる(2018年2月15日)