2018.12.03 教員コラム

「崖の上のポニョ」から考える ーその1

本年度の学祭第1日目、人間関係学会総会前の公演で「崖の上のポニョ」についてお話しさせていただいた。また、同学会誌にも同じテーマで小論を書いた。<1>

私は宮崎駿のアニメを分析する授業を行っている。宮崎駿アニメ映画はきわめて夢に近いファンタジーの世界である。

私たち人間の心の底にはファンタジーが流れている。

心の表に近い部分は、心の外界に通じる常識の部分である。心を掘り下げて、表面の常識から降りて行けば次第に常識は薄くなって非常識の世界になっていく。

心の底の世界は深い海の底にたとえることが出来る。海の浅瀬では見つけることも想像することも出来ないような奇怪な生物が棲んでいる世界なのである。

心の底にある「なにか」が表面に現れると、それは「もののけ」になる。人はもののけを恐れる。だから心の底にふたをしてふだんは忘れている。しかし、海の深海生物が海面に現れることも、ときにはあるのである。深海のさらに奥底の地盤に異変が起きるような事態がそれである。心の底のさらに底に異変がある場合、その心の所有者自身が驚くようなもののけが現れるのである。

それは通常、深い眠りの中で心のふたがゆるむときに夢となって浮上する。しかし、心の基盤の異常が影響する時などは、覚醒時、目が覚めている時に、いままでみたこともない「なにか」が見える、聞こえるのである。

もちろん、目が覚めている時の幻覚は病気の症状である場合が多い。しかし、眠っている時にみる夢に現れる「もの」はストーリーを伴ったドラマ性を帯びていて「ものがたり」となる。それをファンタジーと私たちは呼ぶ。

 

藪添 隆一(2018年12月3日)

 

<1> 藪添隆一「ファンタジー 崖の上のポニョ ・・・臨床心理学的考察・・・」

   年報人間関係学(年報21号)デジタル版 2018.12  

 

その2へ続く

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