京都光華女子大学 健康科学部 心理学科 ニュース 我が家のアニマルセラピー(6)~ソラの不機嫌・私の不機嫌~

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教員コラム

我が家のアニマルセラピー(6)~ソラの不機嫌・私の不機嫌~

クジクと胸に沁みた。この朝もソラとの気マズい状態が続いていた。事の発端は2日前。仕事で遅く帰宅した時、ソラは寝入り端だったのか?出迎えに出てこなかった。それでもいつも通り私は愛情の大盤振る舞いであった。次の日は更に仕事で遅い帰宅になったが、ソラはまた出迎えに出てこなかった。疲れの所為もあっただろうが、猛烈と腹が立った。私は夜どんなに遅く帰っても朝6時に起きて散歩して、自分は朝食を食べる時間がなくても、ソラには餌を手作りして出勤するのに、ソラは出迎えもしないなんて。  社会心理学には衡平理論というものがある。二者関係において、自分が相手から得ているものと相手に与えているものが等しければ、その関係は安定するというものだ。この夜、私とソラのバランスが何かガタッと崩れたような気がしたのだ。それで次の朝、超手抜き散歩をすると、ソラは別にいいよ!と用をすますとさっさと帰る。私が朝食をとっていても、何時ものおねだりもせず、自分の寝床にうずくまって私を睨んでいる。私も意地を張って無視する。無視する。無視する。それでもソラは平気を装う。  そんな日が続くとソラの利発がゆえの気難しさが鼻についてくる。犬なんだからこちらがどうだろうが、好き好きって甘えてもらうほうが楽だ。私の気を察して静観されると、こちらもその状態に固まってしまう。  同僚の先生にこの話をすると「そういう場合は、大人のほうが謝るのよ」と含蓄の深い話を伺った。なるほどと思ったが、では大人であればあるほどストレスが貯まって、人生損ばかりするではないか?!と、アマノジャクな私は考えた。その夜も遅く帰宅した私は、どうせ出迎えもないだろうとブスッとしながらドアを開けた。すると、ソラは寝ていたのをノッソリ起き上がり、少し躊躇しながら私に近づいた。私が「ソラただいま」と両手を広げると、嬉しそうに走ってきて、自分の頭をぐいぐいと私に押し当てた。

やられた、ソラのほうが大人だ。私は猛省し、そして考えた。葛藤回避のみならず対人関係で大人であり続けることは、確かにストレスフルである。でも、大人であることで多くの愛情が周囲の人からよせられる事も事実である。損して得とれということなのかもしれない。 

この事件以後、私は前にも増してソラが大好きだ。

川西 千弘(2019年11月27日)