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教員コラム

小さな自然の中の異変

 私の家に小さなベランダがあります。長の年月いつの間にか集めた鉢植えが1年を通じて楽しませてくれます。
早春には水仙やすみれが花をつけます。初夏にはラベンダーが風に揺れ、夏にはブルーベリーやブラックベリーが実をつけます。秋になるとその紅葉もなかなかのものです。それぞれの季節に咲く花の間に、バラが咲きます。
これらの植物に誘われてか、いろいろな鳥や昆虫がやってきます。
鉢植えの中で最も種類の多いのはすみれです。さまざまなすみれが少し時期をずらして花を咲かせます。後にはすみれの葉が茂ります。

 さて、ずいぶん以前から、すみれがあるのを知ってか、ツマグロヒョウモンの蝶が卵を産みにやってきます。というのは、この蝶の食草はすみれだからです。孵化すると小さな毛虫になります。この毛虫がベランダ中のすみれの葉を食べます。その食欲ときたら半端ではありません。一方でこの毛虫を狙ってアシナガバチがやってきて、お団子にして運んで行きます。アシナガバチの攻撃から逃れることができた幼虫は蛹となり、時が経ち羽化します。蝶となり空に飛び立った瞬間は感動の一言です。

 さて、今年の秋のことです。すでに秋深まる時期だというのに蝶が鉢植えの葉の上に止まってじっとしているのです。まさかと思っていたら、この時期に卵を産んでいたのです。おそらく暖かい気候のせいで勘違いしたのでしょう。その後たくさんの孵化した幼虫を見つけました。ベランダ中のすみれの葉を食べ尽くしてもまだ足らないくらいの勢いです。気温変動に翻弄されながら、何とか蛹になりました。今、かなりの数の蛹が羽化しようとしています。越冬するには暖かすぎるのでしょうか。けれども、しっかりと羽を広げ蝶となり飛び立つにはこの気候ではあまりに厳しいのです。誰の何のせいでもありませんが、早すぎる羽化をせざるをえなかったものたちを悼むしかありません。

 我が家のベランダで起きている小さな出来事です。けれども、この出来事を重く受け止めて、私もまた自然の一部として生きて行こうと思います。
                
千野 美和子(2019年12月24日)