2020年からのコロナ禍では、学校の一斉休校や保育園の登園自粛、集団活動や外出の自粛など、世界各国でさまざまな社会規制が行われました。このような社会規制が子どもの発達にどのような影響を及ぼしたのかということは、世界的にも広く関心が持たれ、数多くの研究が行われました。結果は研究により多少の差異がありますが、多くの研究では子どもの発達に対するネガティブな影響、特に言語発達への影響が報告されています。この度、本学心理学科教員の大谷らが同志社大学赤ちゃん学研究センターと共同で、日本におけるコロナ禍における乳幼児の発達調査を行い。その研究成果がオープンアクセスジャーナルであるFrontiers in Psychologyに掲載されました。ここではその結果を簡単にご紹介します。
本研究チームは2020年9月から2023年3月にかけて、生後10か月の赤ちゃんを対象に発達調査を行い、その結果をコロナ前に実施された発達調査の結果と比較しました。また、その赤ちゃんが1歳6か月から2歳になった段階で、再度同様の発達調査を行い、生後10か月の結果と比較しました(図1)。
その結果、生後10か月時の調査では発達のいずれの領域においてもコロナ前(2015-2019年)の発達調査との差は見られませんでした(図2)。一方、生後18-24ヵ月時の調査では、言語面の発達指数がコロナ前と比べて低下していることが明らかとなりました(図3)。
本研究により、諸外国の研究における報告と同様に、子どもの言語発達の側面にネガティブな影響が生じている可能性が示されました。日本におけるコロナ禍の影響について、専門家が個別に実施する発達検査の結果によって調査した研究はほとんどなく、本研究はコロナ禍が子どもの発達に及ぼした影響について検証する上で重要な研究結果を示したと考えます。一方で重要なのは、この影響が社会的な規制が解除された後にも残されているのか、それとも緩和、解消しているのかを明らかにすることです。現在、本研究の18-24か月時の調査に参加した子どもを対象にその後の発達経過を調査しており(36-42か月時の発達調査)、2025年度中にはその結果を報告したいと考えています。
掲載論文(英文)
Otani T, Kato M, Haraguchi H, Goma H (2024) Effect of the COVID-19 pandemic on infants’ development: Analyzing the results of developmental assessments at ages 10-11 and 18-24months. Frontiers in Psychology, doi: 10.3389/fpsyg.2024.1430135
(心理学科 大谷多加志)