京都光華女子大学 健康科学部 心理学科 ニュース 【前編】心理学科講演会開催~旭山動物園・坂東元 園長のお話を聴いて~

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教員コラム

【前編】心理学科講演会開催~旭山動物園・坂東元 園長のお話を聴いて~

―今回の教員コラムは、川西先生と鳴岩先生との対談形式で、前編・後編に分けてお届けいたします。まずは川西先生からです。

◆川西先生
8月30日心理学科の大イベントである講演会(人間関係学会主催)が無事終わりました。昨年から有識者をお招きし、より専門性の高い講演を拝聴する機会を設けることにしましたが、本年は旭山動物園・坂東元園長に来学いただき、「動物・人・コミュニケーション」というテーマでお話を伺いました(講演会の詳細は大学のHPをご覧ください)。

この講演会で私が特に感銘を受けたのは、行動展示により自分の居場所を得たオラウータンのペアが、相手との適切な距離感を作り出し、互いの存在を認め合い・受け入れて、相手に「やさしくなれる」行動ができるようになったというお話でした。

実は私は旭山動物園のファンで、これまで同園にまつわるテレビ番組や映画などをよく見ていました。実際に動物園にも行ったことがあります。多くの動物園が動物を「見せる」という人間側から設計されたものですが、旭山動物園が行っている行動展示は、限られた環境の中で動物がどうしたらその動物らしく生き生きと生活し続けられるかという動物側の視点にたって設計されています。その結果、動物の生命感がよりリアルに感じられ、それぞれの動物の素晴らしさが発揮されることで、私たちが感銘を受けているのです。

しかし、その一方で動物の身体能力には人間の想像を超える場合があり、動物や動物園の安全性からするとリスクは高くなりがちです。それにもかかわらず、前に進んでいかれる坂東園長をみていると、自身がおっしゃっておられた「すべての生き物に生きる意味がある」という命の等価性について考えさせられました。

人は人間だけが特殊な生き物で価値があると錯覚しがちですが、他の動物の命と共生していかなくてはいけません。人間だけでは地球はなりたたないのです。私は、環境心理学で、アニマルセラピーや盲導犬など動物と人のかかわりについて話をしますが、その際、「人間は、他の動物の命を委ねられていることを自覚しなければならない」という言葉で締めくくります。

今回坂東園長に色々なお話を伺い、また打ち合わせなどでざっくばらんにお話しした中で、「人と動物、いずれもかけがえのない命」ということを真摯に考える貴重な経験をさせていただいたと思います。鳴岩先生はいかがでしたか?

―後編に続きます。

(2015年9月3日)