京都光華女子大学 健康科学部 心理学科 ニュース 【後編】心理学科講演会開催~旭山動物園・坂東元 園長のお話を聴いて~

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教員コラム

【後編】心理学科講演会開催~旭山動物園・坂東元 園長のお話を聴いて~

―今回の教員コラムは、川西先生と鳴岩先生との対話形式で、前編・後編に分けてお届けいたします。前編での川西先生のご感想を受けて、鳴岩先生はいかがでしょうか?

◆鳴岩先生
そうですね。私も「命」について考えさせられました。坂東園長は、お話の後半で「動物たちの素晴らしさは、殺し殺される者たちが共存して生きていることだ」とおっしゃっておられました。「嫌いなものは嫌いでいいが、それは、嫌いなものがいなくていいのとは違う」ともおっしゃっておられたかと思います。つまり、天敵など避けるべき存在は避けなければならないけれども、「食う‐食われる」という命のつながりの中で、皆が生かされているのだということ。

そう考えると、嫌いな者を排除しようという人間の行動は、自然の摂理を忘れたエゴイスティックな行動であり、種の多様性を損なうものであるため、結果的に、自分たちの生存をもおびやかすことになるのだと知りました。自分たちさえ良ければよいという発想では、自分たちすら守れないのだということだと思います。自然の摂理を忘れた存在である人間は、動物たちが何も考えなくてもできている「共存」が自然にはできないからこそ、自分とは異なるものの存在価値を認め、共存の道を探ることに、常に立ち返る必要があるのでしょうね。

また、「次代を守れない社会に未来はない」ともおっしゃっておられました。たとえ、他人の子どもであっても、危険な場所にいれば、近くにいる大人が安全な場所まで連れて行くのが動物の群れとして自然な行動なのに、今の社会は、自分たちの次の世代を守ることすらできなくなっている、異常な事態なのだと教えていただきました。

私は、専門が臨床心理学なので、坂東先生のお話を通じて、現代の日本における苛酷ないじめや、子どもや弱者が被害に遭う事件、子育ての難しさなど、社会を生きにくくしている人間の業(ごう)について考えさせられました。そして、その難問の前で立ちすくむのではなく、前を向いて、一歩一歩できることから着実に進んでおられる坂東先生の不屈の精神に触れ、前に進む勇気をいただきました。

◆川西先生
さて、今回の講演会にはうれしいことがもう1つありました。出産されている卒業生さんにも来ていただきやすいように親子教室の出張版を設置したところ、卒業生が子どもをつれて講演会に来てくれて利用してくれました。講演会終了後、その子どもさんが「ママの大学楽しいから、また明日も来ようね」ってお話しされているのを聞きました。卒業生が新たな命とともに大学に来て講演を聴いてくれる、このような素敵なネットワークが今後ももっと広がっていけばいいなって思いました。

川西 千弘 ・ 鳴岩 伸生 (2015年9月3日)

坂東園長と川西心理学科長との対談の様子

参加者からの質問にもお答えくださりました

教職員の打ち上げにて