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教員コラム

インコのお喋りの場

ピーちゃんとキーちゃんは叔母の家にいるセキセイインコです。ピーちゃんは叔母がペットショップで買い求めたオス、一方、キーちゃんはどこかから庭に飛んできて、そのまま居着いたメスで、それぞれお隣同士のカゴで暮らしています。まず、早朝、キーちゃんがバタバタと羽を振わせてカゴの中を飛び回りながら扉を何度も嘴でつつき、隙あれば外に出ようとします。一方、叔母はカゴから出すまいとしながらカゴの中の掃除をしていて、両者が攻防戦を繰り広げています。彼女はふっくらした体つきでなかなかの美人だと思います。

一方、ピーちゃんはキーちゃんと叔母の喧噪ぶりを黙って見つめています。朝の食事や籠のお掃除が終わってキーちゃんがすっかり大人しくなった頃、今度はなんだかとても不思議な声が聞こえてきます。「ピーちゃんクルクルして」「ピーちゃん上手、上手」ピーちゃんの声、叔母そっくりの口調。喉から出てくる野太い音声に細い声も混じっていて、まるでモンゴルのホーミーという歌い方(独特の発声で同時に倍音を歌う)のように聞こえてくるのがとても不思議です。黙って聞いているキーちゃんにもそれは聞こえているように思います。それが終わってしばらくすると、今度はキーちゃんが高くきらびやかな声でさえずり始めます。

ピーちゃんとキーちゃんがお互いをどのように意識しているかは分かりませんが、お互いの声を聴きあい、邪魔しないように声を出しているようです。ここには、彼らなりのお喋りの場-コミュニケーションの空間-ができあがっているようです。また、一連の行動は毎日の日課として儀式のように生活に組み込まれていて、叔母にとってはそれが安心感の支えになっているようにも思います。

叔母の家に行くたびに、朝日とともに起きて夕日とともに眠る彼らの自然な暮らしぶりを見たり、生き物すべての生き生きとした生活の営みの原点を味わうことができて、私もすっかり健康的になります。

徳田 仁子(2016年7月1日)

歌も上手なキーちゃん

お喋り上手なピーちゃん