授業紹介

言語聴覚士の支援を受けてこられた方をお招きして

4年生の授業「言語聴覚障害学特論」では、8週間の臨床総合実習を前にして、また一年後に言語聴覚士として働くことをイメージできるよう、リハビリテーションや支援の実際を学ぶ内容を取り入れています。

今回は、重症筋無力症というご病気により「摂食嚥下」(食べること・飲み込むこと)が困難になり、言語聴覚士の支援を受けてこられた方をお招きして、お話を伺いました。

この方は、食べること・飲み込むことに関わる筋肉の動きが障がいされ、口から食事を摂ることができなくなり、胃瘻(注1)から栄養剤を注入しておられましたが、医師による治療や、歯科医師による装置作成、言語聴覚士によるリハビリテーションを続けられた結果、約9年ぶりに胃瘻を抜去し、口から1日3食の食事を全てとれるまでに回復されました。

以前は病院に入院されていましたが、4年前に退院され、自宅で療養されながら言語聴覚士による訪問リハビリを続ておられます。

授業では、口からほとんど食べられなかった状態で言語聴覚士によるリハビリを始め、年単位で少しずつ改善されていった様子や、改善がそれ以上見込めなくなったときに、舌口蓋接触補助床(注2)という装置をつけることで、食べられる量がまた徐々に増えたことを教員から紹介し、ご本人からは、その後の訪問リハビリでの訓練の内容や、訓練グッズの紹介をしていただきました。

はじめはペースト状のものしか召し上がれませんでしたが、現在ではご家族とほぼ同じものを食べられるようになり、今まで「訓練」として取り組んできた食事が「楽しくなった」と仰っていたことがとても印象的でした。

最後に、患者さんの立場で言語聴覚士に求めることとして、「その人に必要な情報をより多く提供してほしい」とのメッセージをいただきました。

学生の感想には、

「口から食べられなくなり、相当の不安の中で入院生活を送られていたのではないかと思います。その不安のなか、リハビリを熱心に受けられ、長い年月をかけて今日の段階まで回復されたことに、とても驚くと同時に、あきらめないという気持ちの強さを講義を通じて感じ、学ばせていただきました」
「食べることの喜びを取り戻すためのお手伝いができる言語聴覚士の仕事は、とても魅力があるなと改めて感じることができました」
「患者さんの目線に立って、最後まで一緒に頑張れる言語聴覚士になりたいです」など、言語聴覚士の仕事の重要性や魅力、そして目指す言語聴覚士像について、学び考えることの多い機会となったようで、この方の入院中のリハビリを担当した教員としても、うれしく思いました。


注1)胃瘻・・・チューブで胃に直接栄養を送り込むための穴のこと。胃ろうの手術は内視鏡を使って行われる。

注2)舌口蓋接触補助床・・・舌の動きが悪くなっている患者さんに装着し,舌を口蓋(上あご)に接触しやすくすることで話したり飲み込んだりする機能を回復する。(写真)