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「みみともサマーキャンプ」に参加して

「みみともサマーキャンプ」とは、聴覚分野に興味関心をもつ言語聴覚士を目指す学生が参加し、様々な体験や学びの二泊三日の催しです。
 補聴器会社が主催し、今年初めて行われました。本専攻からも、1年から4年まで数名の学生が参加しました。その感想を紹介します。

(4年Nさん)

 私は、聴覚分野の実習に行く前に少しでも聴覚障がい者支援や補聴器について知りたいと思い参加しました。この分野で活躍されている方がどんな思いで、どのように働かれているのかと思い、新幹線に乗りました。実習一週間分に相当するような充実した三日間でした。

 1日目と2日目は研修施設で様々な講義を受けました。聴覚現場で活躍されているSTの先生のお話や、デフサッカー、デフフットサルで活躍されている選手の今までの人生、最新の補聴器研究などを拝聴しました。

 講義の中で特に印象的だったことは「現在の日本の補聴器満足度は38%と低い」ことです。また現場のSTの先生は「聴覚分野で働いているSTは全体では少数だけど日本で『聴覚障害学』を学んでいるのは言語聴覚士だけだから、より多くの言語聴覚士が聴覚分野に求められている」と言われました。補聴器センターや補聴器メーカー、児童発達支援センターなど聴覚分野でSTが活躍する場の多様性を目の当たりにして、憧れる気持ちが高まりました。

 色々な聴覚支援機器の体験も楽しかったです。古い補聴器の体験と比べて、最新の補聴器の音の良さにびっくりしました。ビニール袋がこすれるなどの不快な音も最新の補聴器だと、ほとんど不快に感じず、装用した時の疲労感が軽かったです。雑音下においての雑音抑制機能も、聴きたい人の声が聴こえて感動しました。また難聴VR体験も印象的でした。大学で行ったイヤマフをつけた擬似難聴体験に比べ、VRゴーグルを装着して、その上からさらに専用のヘッドホンを付けて難聴のきこえを体験しました。「カフェで注文する・車道の端を歩く・晩餐会に参加する」の3つの状況設定でした。情報からの孤立感やコミュニケーション障害がどんなものなのかリアルに知ることができました。聴覚障がいは、周りの情報に気付きにくく、気付かれにくい障がいであり、コミュニケーション障害の問題であることがわかりました。

 2日目のグループディスカッションも楽しい思い出です。各グループで決められた題について様々な立場(今の自分、ST、医師、家族、メーカー、自治体、施設、社会など)話し合って、発表しました。私のグループは「もうすぐ子どもが生まれる方に新生児聴覚スクリーニングを受けることの大切さを知ってもらうには?」という題でした。ディスカッション自体も楽しかったのですが、このような機会がなければ出会うことのなかった、北海道や熊本など遠くに住む、同じ言語聴覚士になる目標を持つ様々な年代の友達ができたのが、とても嬉しく、励みになりました。

 最終日に印象的だったのは神奈川県川崎市にある補聴器工場の見学と「夏やすみ子ども音楽ワークショップ2019」です。「工場」というイメージとは異なり、オフィスビルで補聴器の製造、修理が行われていました。また補聴器センターなどから送られてきた耳型を成型するなど多くの工程を手作業で作っていることを知りました。補聴器の仕組みやできあがるまでの過程を知ることができ、より身近に感じることができました。もし聾学校の実習で、保護者の方や子ども達と補聴器について話す機会があれば、こんなに丁寧に作られていることを伝えたいと思いました。

 「夏やすみ子ども音楽ワークショップ2019」はプロの音楽家、俳優による劇を鑑賞して、楽器の音や響きを感じ、その後に参加者みんなで実際に一つの音楽を作りあげる参加型のイベントです。それぞれの楽器の音や響きを感じ、そして皆で協力しながらの合奏を通して音楽による感動を子供たち自身が感じる機会は、今後も自ら学んでいく姿勢を身に着けるために大切なことだと思いました。私は子ども達とペアになってお手伝いをするボランティアとして参加しました。子ども達とお話できた時間は短かったですが、口形をはっきり見せて、ジェスチャーでコミュニケーションが伝わると、やはり嬉しくなりました。

 今回のサマーキャンプで多くの新しい情報を知り、様々な人と出会い、とても貴重な経験になりました。この度、サマーキャンプを通じて、現場で活躍されている言語聴覚士やメーカーの方々と間近で接することで、聴覚分野の実態を感じることができたと思っています。また主催者の日本の聴覚分野を活性化させたい、聴覚障害に強い優秀な言語聴覚士を増やしたいという熱意が強く伝わってきた3日間でした。今回の学びを活かして、今後の実習でも積極的に頑張っていきたいと思います。また聴覚分野に興味のある言語聴覚専攻の学生にはぜひ参加をお勧めします。

 

 

参加した光華の学生たち

難聴VRの体験