『蝶の羽ばたき、その先へ』 森埜こみち著 小峰書店1400円+税(2019.10)
中学2年生の結(ゆい)は、新学期が始まる日に突発性難聴で左耳が聞こえなくなった。それから・・・ 日本児童文学者協会「長編児童文学新人賞」入選
ヤングアダルトという分野に入るのでしょうが、平易な穏やかな文体で、とても読みやすく、一気に読み終えることができます。
主人公だけではなく、家族や友達の心情が素直に表現されています。また医療機関での検査や説明なども正確で説得力があります。片耳難聴は「きこえる」側です。家族や友達の気持ちも受け止めてしまうし、自分のことを可哀想と思われたくもありません。
頭でわかっていることと日常で行動することには差があり、場面や相手によっても気持ちは揺れ動きます。文章の隅々から、著者の細やかな感受性と表現力を感じました。
いわゆる「感動」とはほど遠いながら「わかるなあ・・」としみじみ共感し、読後に少し爽やかな感覚を得ることができた本です。・・・作者は特別支援教育を専攻する大学卒だそうです。