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授業紹介

「小児臨床の言語聴覚士 松尾友久先生の講義から」

 2年生の多くは病院での一日見学実習の経験はあるものの、小児の療育機関を見学する機会に恵まれた学生は少数でした。先日、京都市児童福祉センターで長年小児の臨床に携わってこられた松尾友久先生(言語聴覚士)をお招きしました。
 半日にわたり、療育機関の概要や具体的な支援の様子、そしてその背景にある子どもの発達への眼差しや、やりとりについて、しっかりとお話をうかがうことができました。以下は、学生のふりかえりから一部です。

・松尾先生の丁寧な説明と映像や音声を交えてのお話で、書籍よりもずっとイメージがつかめました。

 一番印象に残っているところは、「文章で答える質問はとてもハードルの高いものである」→「まずは簡単に答えられるものから段々と成功体験を積ませていく」→「すると、次もやってみよう、次もやってみてもいいかな、ここでなら話せる、といった子ども自身の療育への意欲に繋がる」とおっしゃっていたところです。
 
 子ども自身の意欲や関心そのものが症状の改善に重要なウェイトを占めていることがわかります。もちろん、障害そのものの程度にも寄りますが、療育自体を楽しんで積極的になれる症状の重い子と、症状は軽くてもあまり心を開かず療育(遊び)にも消極的であるとその変化には違いがでるのでしょう。このことは、大人の失語症や構音障害のリハビリでも共通するものだと思いますが、子どもの場合は特に顕著だと思います。大人と違って「楽しい」という気持ちでカバーできるのは子どもならではの強みではないでしょうか。この分野でのSTの腕の見せどころだと思いました。

 私は過去に幼児の療育施設を見学したことを思い出しました。見知らぬ人(私)がいるからか少しそわそわしていた子どもに対して、その時の担当のSTの先生は「今日はお勉強のために来はった若い先生も一緒です。かっこいいとこいっぱい見せようね!」と私のことを説明してくれていました。

 人工内耳装用の2歳前後の子どもさんは、年齢的にもまだ言語の細かい理解はできていたかどうかはわかりませんが、不思議とその後は緊張がとけていました。「子ども相手だから。どうせわからないから」と説明を省いてしまわずに、きちんと説明することは、信頼関係を築くため大切なこと。今回、松尾先生のお話を通して改めて思いました。自分も昔は同じ子どもだったはずなのに、子どもは小さくても意外と大人の言うことを分かっている、すぐに忘れそうになるので気をつけないといけないと思います。