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教員コラム

ツバメから思う脳の仕組み

ツバメがすでに渡ってきているようです。先日家の近くの田んぼや川でツバメが飛んでいるのを今年初めて目撃しました。「ツバメが低く飛んだら雨」というように、天気を察知して餌の虫が飛ぶ高さを予測する行動も非常に興味深いですが、今日は渡りの話です。

ツバメは、冬の間あたたかい南の国で越冬し、春になると日本に飛来することが知られています。こういう行動を「渡り」というわけですが、鳥によっては、太平洋や大西洋を横断するような、何千キロにも及ぶ渡りを、何週間もの間昼夜やすみなく行う種がいることが知られています。


このような「渡り」はどのように可能になっているのでしょう?すぐに疑問に思うのは、そのあいだ、鳥は寝ないのか?ということです。


同じような疑問を持つ研究者はやはりいるようで、ドイツのマックスプランク研究所のRattenborgさんたちは、渡りをすることで知られるグンカンドリの仲間に小さな脳波計をつけ、長い渡りの最中の脳活動を調べて報告しています(Nature communications, 2016)。それによると、渡りの最中のグンカンドリは、主に半球睡眠という、右の脳と左の脳を交互に寝かせることで、渡りを可能にしているようです。また、どちらの脳が寝ているかによって、右への旋回行動、左の旋回行動の比率が異なることも明らかにしています。半球睡眠中は、寝ている反対側の眼だけ開けていることも知られています。

Evidence that birds sleep in mid-flight | Nature Communications


こんな器用な眠り方ができるのは不思議ですが、半球睡眠は、渡り鳥だけでなく、水中で主に暮らす哺乳類でも観察されています。Lyaminさんらのグループは、水中でも陸上でも生活するオットセイの仲間について、その睡眠のパターンと脳内の伝達物質の量について検討をしています(Sleep, 2016)。それによると、オットセイは陸上で眠るときは我々と同じような両半球睡眠、水中で眠るときは半球睡眠を使い分けていることがわかり、さらに、片側の脳の睡眠・覚醒状態をコントロールしているのは、脳幹から分泌されるアセチルコリンの量ではないか、という推測を実験結果からしています。ちなみに、渡り鳥も、陸上や巣に落ち着いてゆっくり寝るときは両半球睡眠をしています。 16 lyamin monoamine fur seal.pdf (ucla.edu)



我々も訓練したらできるようになるのでしょうか。。。

言語聴覚専攻教員
上田敬太

京都光華女子大学 健康科学部 医療福祉学科 言語聴覚専攻 (koka.ac.jp)
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