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教員コラム

ツバメから思う脳の仕組み 2

さて、前回は、ツバメをみながら渡り鳥の睡眠に思いをはせてみました。

 

 今回は、宿題として残っていた、「ツバメが低く飛ぶと雨」というやつです。まぁ勝手に宿題にしていたのですが。

 

 ことわざになっているため、ツバメで有名ですが、実は鳥の仲間はすべて(とはいえ、フクロウの仲間、インコの一部は無理だそうです)、気圧の変化を感知することができます。気圧の変化、すなわち、天気の変化ですね。このことは、考えてみると当たり前というか、実際に鳥たちの行動の観察からもわかります。例えば、もうすぐ雨、というときに鳥たちは空を飛びません。雨の中空を飛ぶことは、翼がぬれ、体温を低下させるため、鳥が生き延びるにあたって百害あって一利なしです。

 

 それでは、このようなことはどのように可能になるのでしょうか?実は鳥には内耳に傍鼓膜器官という特殊な器官があることが知られています。この器官には、我々にある三半規管などと同様に有毛細胞があり、鼓膜にかかる気圧のわずかな変化を感知できるようになっています。この器官を通じて、気圧の変化、結果的には天気の変化を感じ取るようになっているわけです。鼓膜にかかるわずかな圧力の変化から気圧変化を感じ取るなんて、よくできていますね。

 この特殊な器官が発生学的にどのようにできるのかについては、いろいろあったようなんですが、O’neilさんたちが2012年に、この器官がサメなど軟骨魚類の呼吸孔器官という器官と同じ胚の部分から発生することを突き止めました(Nature communications, 2012)。サメの呼吸孔器官は、魚一般にある側線器官(体の横に並んでいる水圧を感知する装置)の特殊なものと考えられていますので、三段論法的にいうと、傍鼓膜器官は魚の側線器官が変化したものと考えられるわけです。魚の側線器官は、魚が泳いでいるときに体が何かにぶつからないように、体の周りの水圧を感知しているのですが、それを気圧の変化を感知することに応用というか、用途を変えているということが分かったわけです。The amniote paratympanic organ develops from a previously undiscovered sensory placode – PubMed (nih.gov) 鳥類の気圧検知器官「傍鼓膜器官」の進化的由来を解明 | 理化学研究所 (riken.jp)