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教員コラム

おしっこボイちゃん

前々回は、長男十兵衛(愛称ジュウ)のお話、前回は長女ミミ(愛称ミー)のお話でした。今回は次男ボイジャー(愛称ボイ)のお話です。

 ミーが突然に亡くなってからすぐに、お父さんは次の子が欲しいと言い出しました。でも、私たちも歳をとりもう飼えないとお父さんを説得しました。それでもと言うので、小型犬なら飼っても良いと譲歩することにしました。もう民間の保護団体に行くのは嫌でしたので、ジュウが入っていた学校の先生に、どなたか譲ってくださる方がないか聞くことにしました。

 お父さんは、毎日のようにまだかと聞くし、返事は来ないし。。。そうして何か月かたって、譲っても良いという人がいるというので、学校までいそいそと出かけていきました。そこにいたのがボイです。ビーグル犬でした。

ドッグショーにビーグル犬を出しているブリーダーさんのところで繁殖され、9歳まで飼われていました。小さくて、グランドをチョコチョコと歩いている子でした。そしてあちこちにジョロジョロとおしっこをかけるのです。男の子なのでマーキングはするにしても、あまりに頻繁でした。ブリーダーさんと散歩に行くと、ブリーダーさんの足にもマーキングするという強者です。もちろん屋外で飼っている子です。

 さあどうしよう!我が家では室内で過ごすことになるのです。ミーと同じく、雑巾とファブリーズを持って走り回る日がまた来るのか!ご飯は少しのドッグフードだけしか与えられておらず、おやつも食べたことのない子だということでしたが、先生がおやつをくれるとパクパク食べるので、ブリーダーさんがびっくりしていました。ドッグショーに出る子は見た目が大事なので、ずっとダイエットしていたのでしょう。もう引退していましたが。

 その日のうちに我が家へ連れて帰り、家の中に入った途端、チョロチョロジャー。さっそく雑巾部隊の出動です。あっちでジャー、こっちでジャー。さすがにお父さんが怒ると、さっさと玄関に逃げていくのですが、10分もしないうちに戻って来てジャー。そうして「おしっこボイちゃん」という異名を得ました。オムツを当ててみましたが、すぐに取ってしまいます。

 ご飯は、初めのうちこそ計って少しだけ与えていましたが、ちょうだい攻撃がすごいので、だんだん増えていきました。あれよあれよという間に、お父さんと同じぷよぷよ体形になりました。でも、おしっこジャーは、だんだん少なくなって、今では、家の中に置いたトイレを使うことを覚えました。

 ボイは、私がトイレに入ると一緒について入ってくるのですが、ある日、トイレに座っている私の足にジャー。さすがに私も叱りました。一度は、私のベッドの上でジャーと「おしっこボイちゃん」の本領を発揮し、お布団をクリーニングに出す羽目になりました。

 最近、ジュウと行った温泉宿にボイを連れて行きました。あまりに心配で、買っておいたオムツをしてみたのですが、なんと太りすぎてテープが止まりません。仕方なく、宿ではずっと見張っていなければなりませんでした。それでも夕食時には落ち着いて、お父さんから一口もらい、即座に取って返して私から一口もらい、とても楽しそうでした。

 楽しい日々は過ぎて、8月、私が股関節の手術のために入院しました。その前から、ボイの食欲は落ちていたのですが、入院中にすっかり食べなくなっていました。動物病院に連れて行っていたのですが、良くなりません。ある日、すい臓の機能がとても悪くなっているという検査結果が出ました。十兵衛のことが思い出されて、私たちは、またもや遠くの病院にボイを連れて行きました。膵臓がとても悪くて、これでは薬を飲むことも無理ですと言われ、その日のうちに入院しました。もっと早くこの病院へ連れてきていればと、またまた悔やむ日々でした。そして、しばらくたったある日、ボイの足の動きがおかしいと言われました。まるで麻痺しているように、右足だけ動かしません。頭部CTを撮ってもらいましたが、犬の脳は小さいので、出血か脳腫瘍でなければ写りません。つまり、脳が感染症に侵されているのか脳梗塞かに絞られたのですが、その先が不明です。相談して、またまた遠くの病院へMRIを撮りに行きました。そして、ようやく大きな左脳梗塞だと分かったのです。すい臓が悪い子は脳梗塞になりやすいのだそうです。これで、治療すれば、麻痺があったって連れて帰れると喜んだのですが、今度は、肝臓がんが見つかりました。前からあったようですが、身体が弱って、一気に悪化したようです。

 もう、元気なボイに戻ることは期待できませんでした。そこで、水さえ飲まなくなったボイを家で看るために、私が、点滴を毎日することにしました。薬を飲ませるのが一苦労でした。弱っていくボイを見るのは本当に辛かったです。

 ある日の夜、私が仕事から帰って、ボイの身体を拭き、点滴をすると、ボイが大きな声で「ワンワン」と鳴きました。本当に鳴かない子だったのに、死にたくないと言っているようで、お父さんと2人で泣きました。

 それから数時間後、ボイは虹の橋を渡りました。十兵衛とミミが、橋のたもとで待っていてくれたのでしょう。最後は苦しまずに亡くなりました。

また、お父さんと私は残されてしまいました。いつになったら、十兵衛は私を迎えに来てくれるのでしょう。                                          To be continued (松田芳恵)