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教員コラム

何を迷う!

このところ、眼の奥を痛くしながら臨床実習のマニュアルを書いている。

ことばの選択や構成に迷い、パソコンの画面を見つめる時間が長いので、眼の痛みが増す。

 以前、臨床実習の事後指導のために、「『ひと』として大切なこと(渡辺和子著)」をある学生と共に読み、1章読み終えるごとに、レポートを提出させたことがある。マナー、とりわけ、挨拶について、考えさせる良い方法はないかと思っていた時に、当時、よく訪れていた赤穂市の書店で、この本に出会った。あまり人を見かけることのない、人口5万人の静かで、温暖な街のお城の近くのゆったりとした構えの書店で、ひとしきり立ち読みをした後、その文庫本を購入した。

 11年経った今、来年度の準備のために、臨床実習マニュアルを書き、そして、授業の時の挨拶をどのような形にしようかと思ったりしている。授業の最初と最後に挨拶をして欲しいという学長の要望に異論はない。医療福祉学科言語聴覚専攻では、コミュニケーションの障害と改善について知識を授けることが眼目なので、コミュニケーションの基礎である挨拶をすることに何の違和感もない。

 学生には、授業の前後に挨拶をするのは、先ず、第一に、学長の要望であること、そして、私は、どのように考えて挨拶を行っているのか、この1年間、各学年に、複数回、説明した。「授業は、教師と学生の協力があって初めて成立するものなので、授業の始めには、『宜しくお願いします。』、終わりには、『授業へのご協力ありがとうございました。』と私からのメッセージを伝えます。皆さんは皆さんなりの思いを込められたら良いと思います。」

 渡辺和子先生は語る。「礼儀といたしましては、始めと終わりの礼をきちっとしたいと思います。(中略)ですから、私も皆さん方がきちんとお立ちになるまで待っています。そして、礼をして頭をあげて、それから坐りましょう。これは、もしかすると他の授業では、ほとんど無視されていることかも知れません。私自身、他の先生の授業まで干渉いたしませんけれども、やっぱり、一生懸命授業をしたいと思いますので、始めと終わりの挨拶をきちんとしたいと思います。挨拶くらいとおっしゃる方があるんですけれども、私は、挨拶さえできない人に、なにができるだろうかと考えています。」

 そうだ!何を迷う!来年度も、挨拶に心を込め、メッセージを送ろう。

 2016年3月14日 中嶋敏子