2018.04.04 学生の活動

「京都北部のフィールドワークから」~1日目の活動報告~

 京都府は南北に長く、北の舞鶴や宮津、丹後半島は日本海に面しているのですが、全国的な知名度はどうでしょうか。京都府は若い人(学生など)にもっと北部のことを知ってもらい、就職にも結びつけたいと考えて、多くの大学に「北部フィールドワーク」の企画(交通費や宿泊費などの補助金が出る)を呼びかけています。

 いこいの村には印象的な言葉が飛び交います。一緒に働く人は入居者、利用者、指導員すべてお互いを「仲間」、また、高齢の方のことを「年が大きい人」と言います。柔らかい響きに込められた、相手を尊重する気持ちが伝わる言葉です。

 
 勤務校の言語聴覚専攻で初めてこの企画に手を挙げました。
聴覚障がい教育についていえば、京都府北部はネットワークが豊かでとても魅力的な地域です。大学での授業や病院での実習では得られない経験を学生にしてもらえるのではないか、と考えました。
 仲介をしてくださった北京都ジョブパークが、こちらの要望を二日間にぎゅっとまとめたプランを考えてくださいました。1,2年生を中心に9名の学生が参加。訪問先は主に3つ、プログラムは9つと多岐にわたりました。多くの方にお世話になり大変感謝しております。

Ⅰいこいの村聴覚言語障害センター(綾部市十倉周辺)

①たからの里(就労継続支援B型事業)

 使われなくなった保育園を改装し、2012年に石窯と薪で焼き上げるパン屋さんがオープン。

一日目の昼食はここで500円のパンランチをいただきました。栗の木寮の仲間(寮からの通いや、一般就労に向けて一人暮らしを練習し始めた仲間も)が成型を中心に、仕込みから焼き上げまで安井将さん(二条中難聴学級卒業生)等の指導支援を受けて作っています。
 カレーパンのカレーやあんパンのあんも手作り、パンの種類が豊富で、常連の地域の人もよく通りがかりに買っているようです。壁紙やメニュー表のかわいい手話イラストにも学生達は注目していました。
 次の日の朝食のためのパンも大量に買い込みましたが、噛み応えのある生地が美味しくて全て食べ尽くされました。山と川、そして田んぼ。「ザ・日本の田舎」と銘打ちたい地域です。

栗の木寮(1982年に開所された障害者支援施設)
 たからの里からバスで5分。聴覚障がいと他の障がいがある方が働き暮らすいこいの村に移動します。

 私はこれまでに中学生と一緒に何度も伺いましたが、その度に仲間のメッセージを直接受け取ることのできる機会が貴重だと感じます。今回も5人の仲間と施設長の木村氏が前に立って話をされました。
 この建物も35年がたち老朽化もあって敷地内に新しい栗の木寮が竣工し、4月にいよいよ引っ越します。建物各部の色やデザイン、部屋の細部にいたるまで、生活の主人公である仲間が選んで決めました。今は引っ越しの準備が忙しいことを、期待一杯に大きな手話で表してくださった方。昔働いていた会社では周囲とコミュニケーションができず引きこもった経験と、今はたからの里でパンを作りながら好きなアーティストのコンサートライブに行くのが夢だという女性。言葉ではなかなか話せないが得意な絵を描き、それをTシャツ等にデザインして仲間と一緒に着ている方。
 脳性麻痺があり思うように動かない指先でも自分の働いている内容を手話で伝えてくださる方などのお話でした。どの仲間も発せられる言葉が力強いです。音声とか手話とかの枠組みを超えて、身体から視線から来てくれた若者に伝えたいという思いが伝わり、それを笑顔で引き出し繋げる指導支援の方との強力なタッグが組まれています。中庭のモニュメント「人として」という言葉の意味を受け止め、学生がまた自分自身がそう生きているかを顧みました。

 言語聴覚専攻の学生は、日頃の学習では専門用語を駆使していますが、コミュニケーション面で人を支援するということの根幹「目の前の人に敬意をもって接し、発せられるものに気づいて返す」ということを目の当たりにし、深く心に残ったようでした。

③梅の木寮(1992年に開所した特別養護老人ホーム)
 聴覚障害者支援の専門性を備えている施設としては全国初です。

当初は聴覚障がいの方だけが対象でしたが、今は屋内の居住エリアは区切られていますが地域の方も利用されています。開所当時4人部屋でしたが、現在では居室は全て個室です。80人以上の方が生活し、高齢者福祉と障害者福祉の両面から設備が整えられていました。しかし、声をかけて通じる聴者と、その方に合ったコミュ方法を探るろう者(手話とは限らない、身振りやサインを含めて)との対話の様子が異なることもはっきりみてとれました。いこいの村では言語聴覚士を募集していますが、まだ勤務している方はいません。
 看護師・栄養士・介護職種と連携する中、嚥下についても専門知識のあるSTは必要だと思う、と後日の学生の記述にありました。 

④桃の木寮(研修生などの宿泊に使用できる一軒家、今回の宿泊所)とあやべ温泉
 中学生と一緒に何度もサマキャンで利用した上林山荘も老朽化のため2,3年前に取り壊されていました。

私たちは敷地内の桃の木寮で宿泊、近くのあやべ温泉で夕食というちょっとしたお楽しみ付きのプログラムです。(温泉上がりには卓球もついてくる)カメムシの襲来に学生は夜中まで悲鳴を挙げていましたが、中学生の引率でないということは、なんとありがたいことか。就寝指導などの必要もなく(全員女子だし)私はさっさと贅沢に一人で寝ることができました。

一覧に戻る