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社会福祉って何?

合理的配慮~眼鏡をかけることはズルい?~

みなさんは、メガネやコンタクトを使用していますか?
視力が良く、メガネやコンタクトを使用していない方は、メガネやコンタクトを使用している方に対して「不公平だ」「ズルい」と感じますか?
感じるとしたら、それはどうしてでしょうか?
感じないとしたら、それはどうしてでしょうか?

メガネやコンタクトの使用をすることは合理的配慮ができている状態です。
合理的配慮は、障害によって妨げられているものを、障害のない人と同じように行えることを目的とします。

例えば、視力の悪い人が黒板の文字が見えないためにノートが書けないとします。
この場合、「ノートを書く」ということが、「視力が悪い」ことによって妨げられてしまっています。
ここで重要なことは、この人は「視力が悪い」わけであって、「ノートを書く」ことはできるということです。
そのため、眼鏡をかけるという手段を講じることで「視力が悪い」ことを補い、本来もっている「ノートを書く」力を発揮できるようにするのです。
先ほどの例で、視力の良さを競う場であれば、眼鏡をかけることは確かにズルいでしょう。
しかし、今回のポイントは「ノートを書く」ことなのです。
そしてこの人は「ノートを書く」力はもっているのです。

合理的配慮は「障害者の権利に関する条約」で定義づけられています。

第2条 定義
「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。

ここで重要なことは「過度の負担を課さないもの」が含まれているということです、
「頑張ればできるから」と合理的配慮が提供されないことがよく起こります。
できないことにだけ対応することが合理的配慮ではありません。
目が悪い人も、裸眼のまま目を細めるなどすれば、黒板の文字が見えることもあるでしょう。
しかし、その行為は過度な負担となります。
過度な負担を課さないことが合理的配慮なのです。

障害者の権利に関する条約では、教育の場においても合理的配慮が必要であることが明記されています。
第24条 教育
5 締約国は、障害者が、差別なしに、かつ、他の者と平等に高等教育一般、職業訓練、成人教育及び生涯学習の機会を与えられることを確保する。このため、締約国は、合理的配慮が障害者に提供されることを確保する。

メガネやコンタクトの例は身近ですので「それをズルいとは思わない」という方も多いかもしれません。
車いすや補聴器など、身体障碍者の方が受ける合理的配慮に関しても寛容な方が多いように思います。

それでは「試験時間を延長する」「試験問題にふり仮名をふる」「一人で試験を受ける」といったことはどうでしょうか?
これらが合理的配慮になる方もいます。

文章を読むのに人よりも長く時間がかかる(識字障害)
漢字を読むことに障害がある(読字障害)
注意集中をすることに障害がある(注意欠如多動症)
といった障害があります。
こうした方々に対して、先にあげたような合理的配慮が行われます。
※各障害の詳細はまた別のブログで書く機会があればと思います。

漢字にふり仮名をふるという合理的配慮はもちろん漢字テストでは行いません。
それは漢字テストは漢字が読めるかどうかが評価される試験だからです。
しかし、数学の文章問題や社会の問題などは、漢字が読めるかどうかを評価していません。
数学や社会の知識は十分にあるのに「漢字が読めない」ということにより、数学や社会の知識の評価を正確に行えなくなるのです。

他にも合理的配慮は各障害によって無数にあります
障害によって何が妨げられているのかを明らかにし、どのようなサポートを受けられるとその妨げが解消されるのかを本人と周囲の人とで話し合っていく必要があります。

それでも「ズルい」と感じる人がいる場合、その「ズルい」と言っている人自身も苦労している可能性があります。
そのため「自分はこんなに頑張っているのに」という気持ちから「ズルい」という言葉がでてくるのです。
その場合には、その方も同じように合理的配慮を受けられるようにしてみるのがいいでしょう。

合理的配慮を行うことは、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)で義務付けられています。

第8条第2項
事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

この法律でのポイントは、「その実施に伴う負担が過重でないとき」ということです。
例えば、小さなビルで、階段しか上がれない場合、車いすの方が登れないということが生じます。
しかし、これに対して「エレベーターをつけなさい」ということはかなり大変ですよね。
そうした場合には合理的配慮ができなくても仕方がないという判断になります。
その場合には、「ここまではできる」「これに代替することはできる」など対応できることを提示することが望まれます。

「合理的配慮」の原語である、Reasonable Accommodation(リーズナブルアコモデーション)のAccomodationという言葉には、「調整・便宜」という意味合いがあります。
合理的配慮を受ける場合には、「配慮してもらう」という発想ではなく、お互いにとって過ごしやすい環境を作るための調整を行っていくという発想が重要です。

浜内彩乃


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