1年生の基礎作業学の授業で、大学で使わなくなった椅子と机の修理を体験してもらっています。「作業療法士は修理の仕事もするんですね」と驚いている学生がいましたが、修理が仕事というわけではありません。とはいえ作業療法士はなんでも屋さんのようなところもあるので、いろいろな修理ができるととても役立ちます。私は対象者の方が大切にしていたアクセサリーや日用品を修理してあげて、とても喜んでもらえた経験があります。
物を大切に使う事を知ってほしいという事もありますが、それだけが目的ではありません。環境を工夫して生活を快適にすることは作業療法士の仕事の一つであり「シーティング」といって、椅子や車いすに長時間座り続ける対象者が、良い姿勢を保てるように座面や背もたれの調整をすることがあります。
授業では、椅子を解体し布を張り替え、手すりや脚の傷を補修して塗装を施しました。学生たちは「椅子ってこんな作りなんですね」「布の張替とかできるんですね」と普段経験しないことに驚きつつも協力しながら楽しんでいるようです。今回は張替や補修だけですが、対象者に合わせて椅子の座面や背もたれの中に入れるウレタンの形状や高さを調節して対象者に合わせてあげることもできるのです。DIYが好きな方には楽しい作業だと思います。作業療法士は身近にあるものの工夫や、生活の知恵を治療に活かせる面白い仕事ですよ。 西谷美智子