京都光華女子大学 健康科学部 心理学科 ニュース 鳥の思考能力-インコのお喋りその後-(後編)

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教員コラム

鳥の思考能力-インコのお喋りその後-(後編)

(前編からの続きです)

アメリカの研究者ペパーバーグが飼育、研究していたヨウム(オウムの一種)のアレックスはとても賢い鳥として有名でした。2007年に31歳で亡くなってしまったのですが、生きているときは、50の物品、7つの色、5つの形を認識し、数を6まで数えることができたそうです。「同じ」と「違う」の意味も理解し、「○○がない」というゼロの概念もわかっていたと言われています。新版K式発達検査2001では、「4つの積木」は指を当てながら4つの積み木を数えることができるかを問う問題で3歳~36ヶ月、「13の丸」は用紙の13個の丸を数える問題で4歳~4歳6ヶ月となっています。おおざっぱにいうとアレックスは5歳程度の知能を持っていたのではないかと推測されています。なお、心理学科ではこの発達検査を心理アセスメント実習(2年生以上配当)の中で実践的に学習します。

アイリーン・M・ペパーバーグ(2010、幻冬舎)は、「アレックスと私」という本の中で、アレックスのトレーニングに、モデル/ライバル法という観察学習法を用いたと書いています。まず教える人がモデルに教えている姿をアレックスに見せ、アレックスに修得させる方法です。彼女は、ヨウムは自然界では群れで暮らしていることから社会的文脈の中での訓練が適切だということで、同時に別の2羽のヨウムもおり、その中での彼らのポジションや個性を大事にしました。(動画サイトにもアレックスが喋ったりテストを受けている姿が出ています。興味のある人は“Alex The Parrot”などと検索語を入れてぜひご覧下さい)。  

一方、叔母の家のキーちゃんはピーちゃんのお隣のケージにいて叔母とピーちゃんの会話は聞いているはずですが、観察学習は全く成立していません。観察学習が成立するためには、その個体の準備状態(好奇心や学習意欲など)と教材提示のタイミングや報酬(誉めることやナッツをあげることなど)のタイミングなどたくさんの要因が絡んできます。

アレックスはアイリーンがイライラしている様子を見て「イライラシナイデ」と言ったり、コノハズクというフクロウを見て非常に脅え「カエリタイカエリタイ」と主張したそうです。アレックスの中では高度の情報処理つまり思考や判断が行われていたことが分かります。アレックスの最後の言葉は「イイコデネ。アイラブユー」だったとのこと。聞いている人が幸せな気持ちになる言葉です。ピーちゃんにも次はぜひこの言葉を覚えてもらいたいなあと思っています。

(2018年5月18日 徳田 仁子)

アイリーン・M・ペパーバーグ著(2011)「アレックスと私」幻冬社刊