京都光華女子大学 健康科学部 心理学科 ニュース 鳥の思考能力-インコのお喋りその後-(前編)

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教員コラム

鳥の思考能力-インコのお喋りその後-(前編)

私は2016年7月この心理学科ブログに叔母の家に住む2羽のインコの様子を「インコのお喋りの場」として報告しました。今回は鳥たちのその後について記すとともに、「アレックスと私」という本を紹介したいと思います。

オスのピーちゃんは生まれたばかりの雛鳥の時から叔母に育てられ、叔母の言い方にそっくりの口調で喋ります。成長して「ピーちゃんクルクルして」と喋りながら止まり木を2回まわった後、「ピーちゃん上手」「ツッツッツッ」「いっぱいまわってつかれたね」と学習発表会の劇のようなセリフ回しを滑らかに話すようになりました。このセリフ回しには順番が決まっています。言葉の持つ概念を共有しながら相互に関係し合って一つの話を作りあげていくような人間同士のお喋りとは違いますが、しかしその喋り方はだんだん上手になっています。 

ある時、私が叔母の代わりに「ピーちゃんクルクルして」と言ってみると、ピーちゃんは、まず止まり木でクルクル回った後、「ピーちゃん上手」と言いました。その後しばらくして、ピーちゃんは鳥籠の床にしいてある広告紙を脚でこすって裂いてカサコソと音を出しました。それを聞いて叔母が「ピーちゃんクルクルして」と声をかけると、ピーちゃんは止まり木を2回まわり、「ピーちゃん上手」「ツッツッツッツッ」「いっぱい回って疲れたね」と続けました。しばらくするとまたカサコソと音を出します。興味深いのは脚によるカサコソの音が「ピーちゃんクルクルして」という叔母の言葉を誘い出すような“遊び”になっていることです。ここには一方が遊びに誘い、他方が誘われるという共同作業ができあがっています。

一方、メスのキーちゃんはどこからか飛んできて叔母に拾われたインコです。雛鳥からではなく大きくなってからの同居でお喋りを身につけることは出来ておらず、叔母から冗談めかして「無芸大食」と言われています。お喋りは出来ませんが、とても高く華麗な声でさえずり、卵を1ヶ月に2個ずつ生んでいます。肝っ玉母さんのように堂々とした存在感です。彼女は出産が近づきお腹やお尻が大きくなると、イライラしたように紙を噛んだりひっかいたりして落ち着かなくなるようで、籠の外から人が指を近づけると嘴で突つきます。穏やかではありませんが、これも人と何らかの関わりを求める仕草のようです。

(2018年5月18日 徳田 仁子)

(後編に続きます)

 

お喋りと甘え上手なピーちゃん

肝っ玉母さんで抜群の存在感のキーちゃん