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教員コラム

夢の意味(前編)

みなさんは昨夜見た夢を覚えていますか? すぐに思い出せる人は少ないと思います。多くの人は、時々は覚えているけど最近見たのはいつだったかな、という感じでしょうか。まったく夢を見ないという人もいますが、それはたぶん覚えていないだけで、人は一晩のうちに4~5回(レム睡眠時)は夢を見ているそうです。

反対に、ほぼ毎日、夢を覚えているという人もいます。ぼくもほとんど毎日、夢を覚えている方ですが、たいてい午後になると夢の輪郭はぼやけていき、夕方には残骸のような断片になってしまい、一日の終わりには元通りに復元することはほぼ不可能となってしまいます(ですが、布団に入った途端、完全に消えてしまっていた昨夜の夢がよみがえってくることもあり、夢はつくづく不思議だなと思わされます)。

そもそも、夢に何の意味があるのでしょうか。夢に意味がないとしたら、夢のことをあれこれ考えることは時間の無駄という他ありません。人生はまさに一炊の夢なのですから、やるべきことは他にたくさんあるはずです。それに、通常、夢を思い出すにはそれを追いかける努力が必要ですし、夢の尻尾をやっとつかんだと思ったら、それはもう一方の自分の手だった、ということもよくあることです。明確に同定できるイメージや言葉があれば、その意味を探る方法も開発しやすいでしょう。ですが、夢はうつろいやすく、それも思い出すたびに変化していくほどです。毎夜門は開かれるというのに、目覚めた後の私たちは、夢の王国の門の外から、漏れてくる明かりや音や煙や匂いその他の感覚を手掛かりに、中の様子を想像するしかありません。

夢に意味があるのかという問いは、人生に意味があるのかという問いと似ているところがあります。意味があるかないかは最初から決められていることでなく、そこに私たちが何を見いだしていくかにかかっているのです。

後編に続きます】

長田 陽一(2015年12月15日)

アンリ・ルソー「眠るジプシー女」