2025.06.05 教員コラム

進化とヒトの心(教員ブログ:上田Dr)

読者の皆さんこんにちは。

前々回ぐらいから、日高敏隆先生のこと、今西錦司先生のことなどを書いてきました。
お二人に共通するのは、動物の生態学研究、進化についての研究をなさっていた、ということでした。

そもそも、進化論というのは、ダーウィンが言い出したことです。

1809年生まれのダーウィンは、1831年から1836年の5年間かけて、ビーグル号の世界一周航海に博物学者として参加し、見聞したことをもとに、後に進化理論と呼ばれる考えをまとめ、出版しました。当時のヨーロッパは、キリスト教的世界観が支配的で、この世界は「神様が造ったもの(創世記に記載されているように)」という理解でした。ですので、ヒトが他の動物から進化したとするダーウィンの説は、社会的なバッシングにあう危惧があり、その出版のタイミングは慎重に検討されたといいます。

一連のダーウィンの著作の中に、「The Expression of the Emotions in Man and Animals(ヒトと動物の情動表出)」があります。

この中では、情動表情が種を超えて理解可能であることが述べられ、犬・白鳥・ヒトの女性の怒り表情が、ダーウィン自身のイラストを添えて、似通っていることが説明されています(画像は、ダーウィン自身のイラストを参考にChat GPTがつくったものです)。
感情というのは、どうも、ヒト至上主義のヒトからすると、人間独自のものと思われがちです。しかしながら、犬や猫を飼っている読者の皆さんは同意いただけると思いますが、動物にももちろん感情はありますし、動物の感情を表情から読み取ることは可能です。

つまり、感情という仕組みは、案外進化的に古くからある仕組みではないか、ということをダーウィンは主張したわけです。実際、ダーウィン以後、脳の研究が進むにつれて、情動を作り出す仕組みの中心として脳の中の扁桃体という場所が注目され、この部位は、爬虫類以降の脳では確認できる部位として知られています。最近では、情動とは生き物が生存に有益な刺激(快)に近づき、生存に不利益な刺激(不快)から遠ざかるためにできた仕組みではないか、と考えられるようになっています。ヒトの持つもう少し複雑な情動、例えば「恥じらい」などは、複雑情動、あるいは社会的情動と呼ばれ、生き物として持っている上記の仕組みと、社会的価値観が相互作用して生じてきたのではないか、という理解ですね。

もう少しいろいろ情動についてはあるのですが、また次の原稿でお書きしたいと思います。お楽しみに。

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