2025.12.16 教員コラム

「高次脳機能障がい」のある方へのシームレスな支援

ヒトの脳には複雑な社会で生きていくために必要な機能が多く備わっています。
そのような高度に発達した脳機能のことを「高次脳機能」と言います。

例えば、記憶がそうです。記憶がしっかり機能していないと今朝食べた朝ご飯を忘れてしまう、休日に友達を遊ぶ約束を忘れてしまう、大切な人との会話の内容を忘れてしまうなど日常生活に大きな問題が生じてしまいます。他にも、注意機能(外界からの刺激に適切に気づくことができるなど)や遂行機能(計画通りに物事を進めることができる)、言語機能(相手の言葉を理解して、自分の言葉で相手に伝えることができる)、メタ認知(自らの客観的に見る力)などなど他にもたくさんの機能あります。このような高次脳機能によって我々は快適に過ごすことが出来ています。

そして、何らかの原因で脳を損傷して高次脳機能が障がいされることを「高次脳機能障がい」と言います。言語聴覚士が医療・福祉の現場で対象としている障がいの1つです。

しかし、この障がいについて知っている方はまだ少なく、当事者(高次脳機能障がいのある方)が退院後に職場・学校・家族・知人などから障がいに対する理解が得られずに困難が生じることもしばしばあります。そのため、より多くの人たちにこの障がいについて知ってもらうためのイベントが当事者・家族および医療従事者などによって全国各地で開催されるようになってきました。

さらに、このたび「高次脳機能障がい者支援法」が令和841日より施行されることが決まりました。●高次脳機能障害者支援法案

この支援法に記載されている基本理念の一部を以下に引用します。

3条:~、個々の高次脳機能障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて、かつ、医療(リハビリテーションを含む)、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に、その意思決定の支援に配慮しつつ、医療機関における医療の提供から地域での生活支援を経て社会参加の支援に至るまで、切れ目なく行われなければならない。

このように、高次脳機能障がいが多くの方に認知され、そして議論されていくことで、入院から社会参加までシームレス(切れ目のない)な専門的支援に繋がります。

京都光華(女子)大学言語聴覚専攻の学生さんも、入院中の患者さんが退院後にどのような人生を歩んでいくかを見据えたリハビリテーションを提供できる言語聴覚士を目指して日々頑張っています!

(教員 河村)

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