京都光華女子大学 キャリア形成学部 キャリア形成学科 ニュース マスクについて(ジャパンナレッジから)

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教員コラム

マスクについて(ジャパンナレッジから)

マスクが欠かせない…寒さ乾燥花粉症もしくはスッピンを隠す以外で、こんなに日常的にマスクをつけているだなんて、1年前の自分には予想もできなかったことです。そういえば「予防」のためのマスクはいつから広く浸透した考えなのでしょう…。
こんな資料があります。『流行性感冒』(内務省衛生局編)――これは、1918年~20年にかけて世界中で猛威を振るったスペイン・インフルエンザの日本における流行の状況・予防・病理などが記録された貴重な調査書です。スペイン風邪が収束した1922年に刊行された報告書ですが、「東洋文庫」に入っているので今でも読むことが出来ます。

さて、ここに「予防手段」も記されていて「おお!」と思ったのですが、たとえば次のようなところ…。

   各国に於て施行せる予防法の極要は已に別項に掲げたるを以て
   此処には各国を通じて略共通せる予防手段なる「ワクチン」、
   「マスク」及び含嗽の三につきて少しく蒐め得たる材料を掲んとす。

                                              (「東洋文庫」『流行性感冒』第6章第5節 第1項)

含嗽は「うがい」と読みますが、手洗いが書かれていないことを除けば、今私たちが行う予防法と大差が見られません。特効薬はわからない、予防としてできることはこれくらい…。この時代にはすでに考えられていたのですね。素人なので報告書のわかる箇所だけ読んでいくわけですが、「マスクの効果」に「絶対的価値あるものにはあらざれども危険の度を少くするを以て実用の価値あり」「出来る丈け高く眼の下迄掛けしめ之を「ゴム」紐又は打紐を以て耳を越て後頭に固定し以て外縁よりする伝染を防ぐべし」などの記述があり、素材や飛沫飛距離など、実験的研究のことも挙げられています(イラスト付き)。

もう一つ驚いたのが「パンデミー」という言葉。スマホのネットニュースでみた言葉は、当時すでに使われていたのです。本書には研究も不完全な「インフルエンザ」が世界の至る所で甚大な被害をもたらしていることが書かれていますが、今の状況と重ねて読まずにはいられません。もう少し読んでみようと素人が頁をめくるのは、当時これを執筆した人がどれほど丁寧にその状況と向き合ったのかが伝わってくるからだと思いました。

ところで、図書館のデータベースを利用されたことがありますか。いつもなら学内からしかアクセスできないところ、現在は学外からもアクセスが出来るとのことで、大変有難いのです。上記の資料は、私が「Japan Knowledge Lib」で思いつくままにキーワードを入れて検索した結果出会った資料です。ぜひ一度、「Japan Knowledge Lib」で遊んでみてください。

「東洋文庫」の『流行性感冒』で解説を書いている西村秀一さんという方が最近ネットで記事を書かれています。当時のポスターなども紹介されており、大変興味深いページでした。