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教員コラム

国語辞典をひいてみる

「これはどういう意味?」
強く意識しなくてもふと思うことがあるではないでしょうか。
ニュース・テレビに当然のように現れるカタカナ語も冷静に考えると不思議な和製英語だったりします。新聞記事でカタカナ語の氾濫が指摘されることはしばしばあることです。先日の天声人語でのいまカタカナで人々を煙(けむ)に巻くとしたら……は記憶に新しいものです。
そんななか出版された新しい国語辞典に『新明解国語辞典 第8版』があります。考える人の頭部が辞書になった広告が話題になりました。
「新解さん」の愛称で親しまれています。いろいろな言葉を引いてみると親しまれる理由が少しばかり見えるかもしれません。
試しに「よのなか」を引いてみましょう。
  「よのなか」【世の中】❶社会人として生きる個々の人間が、だれしもそこから逃げることのできない宿命を
              負わされているこの世。一般に、そこには複雑な人間関係がもたらす矛盾とか政治
              ・経済の動きによる変化とかが見られ、許容しうる面と怒り・失望をいだかせる面
              とが混在するととらえられる。(以下略)
こんな具合です。
「あさり」と「はまぐり」を引きくらべたことはありますか。
  「あさり」〔「漁り」」の意〕砂地の海浜に産する、小形の二枚貝。肉は食用。(以下略)
  「はまぐり」〔浜栗の意〕遠浅に住む二枚貝の一種。食べる貝として、最も普通で、おいしい。殻はなめらか。(以下略)

「あさり」は美味しくないのかしら…じゃあ蜆はどうなっているのか…なんて気になってしまうわけです。他にも、「恋愛」「愛」などは有名で、今回の改訂で「今の時代」の影響を受けて表現が改められているところもまた考えさせられるわけです。
序文には、次のようにあります。
   時代に即した国語辞典として、新項目も多数採用した。今、正にその渦中においてこの序文を執筆しているの
   であるが、新型コロナウイルス関連の新語が多くなったのも当然であろう。全員の命に関わる事柄なのに、一
   部の人にしか意味の分からないカタカナ語が多用されるのは、「ハザードマップ」など、いやそれ以前からの
   流れがますます加速していることを意味し、敢えて刺激を与えるためという高ようを仮に認めたとしても、な
   お考えるべきものと思うが、辞書の役割としてはそれらを分かりやすく解説するしかない。

「コロナウイルス」を引いてみると、立項されています。2020年に大流行したことも述べられています。
ジャパンナレッジを見てみると、「デジタル大辞泉」や「日本大百科全書」といった大型の辞典には立項されていますが、2020年の大流行について記載がある小型辞書は新解さんが最初ではないでしょうか。

新い辞書の宣伝では決してなくて、時代の変化に敏感にいられるように、アンテナを張っていることの大切さを改めて感じた出来事になりました。
国語辞典と一言でまとめるにはもったいなくて、上記の通り、改定の度に出版された時代を汲み取り、反映していることをふまえれば、読み物としても興味深いものになると考えています。
光華女子大学の図書館にも何種類もの辞典が配架されています。予約なしで利用できますので、授業の帰りに覗いてみてください。古い新解さんもいましたよ。
https://www.koka.ac.jp/toshokan/

たずねられた「日本語」、正確に説明できる人でありたいものです。