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教員コラム

生活の中の「おもしろ」英語

 本学の魅力のひとつは国際観光都市京都に在り、なかでも有名な嵐山に近いことです。しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、門川市長の「京都を愛する全国の皆さん、今は京都に来るのをお控えください。」宣言以降、本当に京都の街から観光客の姿が消えました。スーツケースを引きスマホの地図を見ながら歩く外国人観光客は、現在皆無です。

 すっかり活気を失った街で多く目にするのは「閉店」のお知らせです。でも注意深く観察してみると、国際都市だからでしょうか、または、「閉店」という日本語が、一時的なものではなく、「店じまい」をも連想させるからなのでしょうか、「閉店」お知らせの多くが英語表記を採用していることに気づくのです。

 英語教師の性(さが)か、この表記がとても気になって、最近では、散歩がてらさまざまなお店のお知らせを見て回ることが日課のようになっています。ちょっといっしょに「おもしろ英語ウオッチング」の仮想散歩を楽しみませんか?

 私の実感では、正しく「閉店(中)」のお知らせを掲げているお店は半分にも満たないと思われます。openは「開ける」という動詞の他に「開いている」という状態を表す形容詞があるので、「営業中」はopenで正しいのですが、openの反義語であるcloseが「閉まっている」という状態を示す場合は、closedという形容詞を用いなければなりません。「閉店(中)」を示したいのであればclosedの表記を用いなければならないのですね。

 街中の多くのお知らせで使用されているcloseは、このままであれば「閉めてください」という動詞の命令か、「近寄って」という形容詞となります。ややこしいことに、closeが動詞である場合と、形容詞である場合は、語尾の音も、有声音(日本語の濁音)と無声音(日本語の清音)の違いがあるため、発音まで異なります。

 ちなみに、毎日のように耳にする「三」(閉・集・接)は、一語一語が意味を持つ漢字ならではの表現ですが、英語ではこんなにコンパクトに表現することができません。ただし、NHK WORLD-JAPANのニュースでは、the three Csとして、confined spaces, crowded places, close contactを避けるよう促しています。この「密接」を表すために用いられている単語がcloseです。みなさん、店先でcloseを見ても、Don’t get closer!(近づかないでくださいね)The store is closed.(お店は閉まっていますよ)

 形容詞closeには「親しい」の意味もありますので、親友はclose friendと言います。Even if you are close to each other, don’t get closer! (親友同士でも、近づかないでね!)