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ベルの物語

ベル 春を待つ ③

ベルと うたう先生は 慈光館の 保育実習室に やってきました。

部屋の なかは うす暗く、誰も いませんでした。

うたう先生は ベルを 小さな 椅子に 座らせてくれました。

そして また歌いながら 部屋の 窓を 開けたり、倉庫の ドアを 開けたり いそがしく 動きはじめました。

先生の 歌を 聞きながら、ベルは ぼんやり 部屋を ながめていました。

 

なんだか みんな 眠っているみたい。

本当に ここでまた 遊べるのかなあ。

ベルは 心細くなりました。

ベルが 子どもたちと 遊んだのは、ずいぶん 昔のことのように 思えました。

 

すると その時です。

後ろから 小さな 声が 聞こえました。

 

ベルっ、ベルっ。

 

ベルが ふりむくと、ぬいぐるみや 人形たちが ぱたぱたと 手を ふっていました。

ベルの 顔が ぱあっと 明るくなりました。

 

わあ 久しぶり。みんな 元気だった?

元気だよ。ベルも 元気だった?

 

ちょうど その時です。

また 歌が 聞こえてきました。

 

♪ちょっと ベルちゃん。あなたも お掃除 手伝ってちょうだいな♪

 

ぬいぐるみたちは、くすくす 笑い出しました。

ベルも 思わず 笑ってしまいました。

いつもの 光華こどもひろばを 思い出したからです。

うたう先生は いつも こんなふうに 子どもたちに 話しかけていました。

 

また みんなで 遊ぼうね。

 

ベルは ぬいぐるみたちに 手をふると 部屋の お掃除に 取りかかりました。

ぬいぐるみたちは 何事もなかったかのように 前を 向きましたが、それでも 口の すみっこが まだ 笑っていました。

(続く)

保育実習室は とても 静かでした

ベル 久しぶり!