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教員コラム

「名詞」の話、あれこれ

夏季休暇中も4回生の卒業研究は続いています。絵本を英語原書と日本語訳書で比較研究中のあるゼミ生からの質問は、作品中、grassとflowersには定冠詞theがついているのに、leavesが無冠詞で並んでいる理由に関するものでした。作品をよく読むと、前頁にgrassとflowersは言及済みですが、leavesはこの頁で初出であるため、とわかりました。

英語の文法で、学生が苦手だという項目は、たいていの場合、関係代名詞や、完了形や、分詞構文などですが、何十年と英語を勉強してきて、なお、私がもっとも難しいと思うのは、名詞の扱いです。数えられる、数えられない、(不)定冠詞、無冠詞、単数、複数・・・、しかも話す場合は、瞬時にこれらを判断しつつ、動詞と整合させる必要があるので、考えだすともう大変です。

最近読んだ『ヘヴィ』という作品中、白人社会で生き延びるため、徹底して正確な話し方、書き方を母親から(時に暴力を受けてまで!)教育される黒人の主人公が、祖母のことばのミスを訂正する場面が印象的でした。feetをfeetsと言う祖母に、彼は「feetはfootの複数形だから」と説明するのです。私たちも複数の変則型を覚えさせられましたね!

でも、日本語を学ぶ外国語母語話者だって、日本語の「助数詞」にとても手こずるのです。最近はなんでも「~個」と数える傾向がありますが、日本語母語話者であれば、自然に本は「冊」、鉛筆は「本」(しかも、ぽん、ほん、ぼん、と読み方も変化します)、車は「台」、などと言い分けますよね。自分が外国人として日本語を習得することを考えると、気が遠くなります。羊羹を「棹」と数えた時、大人になった気がしたことを思い出しました。

去年の12月、京都で突然の雪が積もった日のことです。雪だるまを作ったよ、と話してくれた5歳の孫に「みっつ作ったの?」と聞くと、「ちがう、よんつ作ったよ!」「よんこ」と言おうとして、私の「みっつ」にひっぱられたのでは、と思います。因みにこの孫、「コーンスープ」を「コーンプース」、「テレビ」を「テビレ」と言い続けていましたが、6歳の今夏は、すっかり正確に言えていました。

言語習得とは、どの言語であれ、本当に興味深く、時間のかかるプロセスですね!

雪だるま“よんつ”?