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2024.11.02 教員ブログ地獄に通じる井戸へ… 六道珍皇寺と「六道の辻」
ライフデザイン学科教員の久世です。
私は前回も書きましたが本学で「サブカルチャー論」という科目を担当しています。この科目では、今年度は「妖怪」や「鬼」「怪異」などを日本人がどう捉えてきたのか、をテーマとしています。私の専門は日本近世史ですので歴史学はもちろん、文学や民俗学の研究成果を参照しつつ、「妖怪」や「鬼」「怪異」を分析し、そこから何を得るのかについて、学生達にも考えてもらっています。
「サブカルチャー論」では、人々が不思議や怖さを感じた場所を実際に見る機会を持ちたいと思い、フィールドワークの時間を設定しています。
今年は六道珍皇寺さんにご快諾を賜り、希望者で見学を行いました。
ご住職から、このお寺のある場所がこの世とあの世と境目「六道の辻」とされてきたことや、お寺の説明、お寺に伝わる小野篁像、閻魔像にまつわるお話などを伺い、貴重な寺宝もお見せいただきました。
小野篁は、平安時代に実在した宮廷官人です。百人一首に「わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人にはつげよ海人の釣舟」という歌が採録されています。さらに漢詩や武芸にも秀で、高身長、反骨心にあふれる性格だったと言われています。これだけでも魅力満載な人物ですが、彼を際立たせているのは、冥府の官僚であった、とされる伝説です。彼の鬼才ぶりゆえか、平安末期以降、篁は、昼は朝廷に出仕し夜は閻魔庁につとめていたという言説も出てきました。江口夏実氏の漫画『鬼灯の冷徹』で篁を知っていた学生は、歴史史料に残された実像を知ることが出来て、喜んでいました。
そしてお寺の奥には、有名な「小野篁が冥府に通った井戸」「黄泉がえりの井戸」があります。実際に見る井戸の周りからはただならぬ気配を感じた学生も多く、書籍やインターネットでは体験できない、場の雰囲気に圧倒されました。
なおこの井戸は、森見登美彦氏の小説『有頂天家族』にも、蛙に化けた狸が隠棲する井戸として登場します。『有頂天家族』は今秋は演劇作品になって京都南座でも公演されます。こちらの公演には、私もほんの少しだけ関わっています。
また、境内にある「お岩大明神」についても、ご住職から伺いました。所有者に障りをなした四谷怪談のお岩さんの等身大の像が奉納されているとのことでした。見たら眠れなくなるほど怖い像なので、公開はしていないそうですが、現在は六道珍皇寺さんで丁重にお祀りしていらっしゃるので、障りはないそうです。
ご住職に有意義なお話をお聞かせ頂き、また、貴重な寺宝をふんだんにお見せいた頂いて、実り多いフィールドワークとなりました。お寺を出た後は、近くのみなとやさんで「幽霊子育飴」を購入したり、鳥辺野の方面を散策したり、思い思いに「六道の辻」の雰囲気を味わいました。